坂道や毎日の買い物で大活躍の電動自転車ですが、「電源を切って押して歩くと、ものすごく重い」と感じたことはありませんか?
便利なはずの電動自転車が、駐輪場での少しの移動や、歩道を通らなければならない場面で、ただの「重い鉄の塊」に感じてしまう。
そんな経験から、「電動自転車の購入をためらっている」「自分の体力で扱えるか不安」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、電動自転車の押し歩きがなぜ重いのか、その原因から、誰でも簡単に実践できる軽くするためのコツ、そして押し歩きが楽になるモデルの選び方まで、徹底的に解説します。
最後までお読みいただければ、電動自転車の押し歩きに対する不安が解消され、あなたのライフスタイルに最適な一台を見つけるヒントが得られるはずです。
電動自転車は押し歩きすると重い?

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電動自転車の購入を検討している方や、すでに利用している多くの方が抱く疑問、それは「押し歩きは本当に重いのか?」という点です。
結論から言うと、多くの場合、電動自転車の押し歩きは一般的な自転車に比べて重く感じられます。
しかし、その「重さ」には明確な原因があり、それを理解することで対処法も見えてきます。
この章では、まず電動自転車の押し歩きに関する基本的な疑問について、一つひとつ掘り下げていきましょう。
そもそも押し歩きは必要か?
快適な走行が魅力の電動自転車ですが、なぜ押し歩きが必要になるのでしょうか。
自転車に乗っている以上、必ず押し歩きをしなければならない場面に遭遇します。
例えば、以下のような状況が考えられます。
- 歩行者専用の道路や、自転車の通行が禁止されている歩道を通る場合
- 駅の構内や商業施設など、自転車の乗り入れが禁止されている場所を移動する場合
- 混雑した駐輪場で、自分の自転車を出し入れする場合
- 急な上り坂で、安全のために一度降りて押す場合
- パンクなどのトラブルで、自転車店まで押していく必要がある場合
- バッテリーが切れてしまい、自走できなくなった場合
特に都市部では、歩道と車道が明確に分かれており、歩行者の安全を守るために自転車を降りて通行しなければならない区間が多く存在します。
道路交通法上、自転車から降りて押して歩いている人は「歩行者」として扱われます。
そのため、自転車通行可の標識がない歩道でも、押して歩くことで通行が可能です。
このように、電動自転車を安全かつ快適に利用するためには、押し歩きという行為が不可欠な要素となっているのです。
押し歩きが重いと感じる原因は?
では、なぜ電動自転車の押し歩きは、これほどまでに重く感じられるのでしょうか。
その原因は、主に3つの要素に分解できます。
- 車体そのものの重量
- モーター部分の構造
- 重心の位置とバランス
まず、最も直接的な原因は「車体そのものの重量」です。
一般的なシティサイクル(ママチャリ)の重量が15kg〜20kg程度であるのに対し、電動自転車はモーターやバッテリーといった電動アシストユニットを搭載しているため、その重量は25kg〜30kg、子供乗せモデルになると30kgを超えるものも珍しくありません。
単純に5kgから10kg以上重いわけですから、押して歩く際にその重量感がずっしりと腕や腰にかかってくるのは当然と言えるでしょう。
次に、「モーター部分の構造」が関係しています。
電動自転車のアシストユニットは、ペダルを漕ぐ力を感知してモーターを動かす仕組みになっています。
電源がオフの状態で車輪を動かす(=押し歩きする)と、このモーター内部のギアや磁石による抵抗、いわゆる「引きずり抵抗」が発生することがあります。
特に、初期のモデルや一部の安価なモデルではこの抵抗が大きく、前に進もうとする力にブレーキをかけているような感覚に陥ることがあります。
近年のモデルでは、この引きずり抵抗を大幅に軽減する「ゼロ抵抗モーター」などが開発されていますが、完全にゼロになるわけではありません。
最後に、「重心の位置とバランス」も重さを感じる一因です。
電動自転車は、重量物であるバッテリーとモーターが特定の位置(バッテリーはフレーム中央部、モーターはペダル付近)に集中しています。
これにより、一般的な自転車とは重心の位置が異なり、押し歩きの際に独特のバランスの取りにくさが生まれます。
特に、少し傾いただけでグラっときやすく、それを支えようとすることで余計な力が必要になり、「重い」と感じてしまうのです。
これらの物理的な原因が複合的に絡み合うことで、電動自転車特有の押し歩きの重さが生まれています。
バッテリーが切れると特に重くなる?
「走行中にバッテリーが切れたら、ただでさえ重いのに、さらに地獄を見るのでは?」と心配される方は非常に多いです。
この疑問に対する答えは、「はい、アシストがなくなる分、体感として非常に重くなります」となります。
電動自転車の最大のメリットは、なんといっても電動アシストによる軽い漕ぎ出しと坂道でのパワフルなサポートです。
バッテリーが切れるということは、この最大の恩恵をすべて失うことを意味します。
25kg以上ある車体を、自分の脚力だけで動かさなければならなくなるため、平坦な道ですらペダルを漕ぐのが非常に重労働になります。
では、押し歩きの場合はどうでしょうか。
バッテリーが切れても、車体の物理的な重量が変わるわけではありません。
しかし、多くの人が「バッテリーが切れると押し歩きもさらに重くなる」と感じます。
これは、心理的な要因と、先述したモーターの引きずり抵抗が関係しています。
まず、走行中にアシストの恩恵を存分に受けていた状態から、突然そのサポートがゼロになるため、そのギャップから「急に重くなった」と強く感じてしまいます。
また、押し歩きの場合、アシスト機能はもちろん使えません。
走行時と同じく、モーターの引きずり抵抗を感じながら重い車体を押すことになるため、疲労感は格段に増します。
特に、バッテリー切れが想定外の場所(例えば、長い上り坂の途中など)で発生した場合、精神的なショックも相まって、その重さは何倍にも感じられることでしょう。
したがって、電動自転車を利用する際は、こまめなバッテリー残量のチェックが非常に重要になります。
子供乗せモデルの押し歩きは大変?
小さなお子様がいるご家庭の強い味方、子供乗せ電動自転車。
しかし、その利便性と引き換えに、押し歩きの際の負担は他のモデルに比べて格段に大きくなります。
子供乗せモデルの押し歩きが特に大変な理由は、以下の点に集約されます。
- 圧倒的な車体重量
- 子供を乗せた際のさらなる重量増
- 高い重心と不安定さ
まず、子供乗せモデルは、子供の安全を守るために頑丈なフレームやチャイルドシートが取り付けられており、車体重量だけでも30kgを超えるものが主流です。
これは、一般的なシティサイクルの約1.5倍から2倍近い重さです。
この時点で、すでに押し歩きのハードルはかなり高いと言えます。
さらに、ここに子供の体重が加わります。
例えば、体重15kgのお子様を乗せたとすると、総重量は「車体33kg + 子供15kg = 48kg」となり、もはや原動機付自転車に近い重量になります。
この約50kgの塊を、腕と腰の力だけで支えながら押して歩くのは、想像以上に大変な作業です。
そして、最も注意が必要なのが「高い重心と不安定さ」です。
チャイルドシート、特に後部座席に子供を乗せると、自転車の重心はかなり高い位置に移動します。
重心が高くなると、少し傾いただけでもバランスを崩しやすくなり、転倒のリスクが高まります。
駐輪場の狭いスペースで方向転換をしようとしたり、少し段差のある場所を通ろうとしたりする際に、自転車がグラッと傾き、慌てて支えようとして腰を痛めてしまうケースも少なくありません。
子供を乗せた状態での押し歩きは、単に重いだけでなく、常に転倒のリスクと隣り合わせの、非常に気を使う作業であることを理解しておく必要があります。
押し歩きが重いという口コミは本当?
インターネットで電動自転車について調べると、「押し歩きが重くて後悔した」「想像以上に大変だった」といった口コミを目にすることがあります。
こうした口コミは、果たして本当なのでしょうか。
これは、「多くの場合、本当です」と言えます。
もちろん、個人の体力や、それまで乗っていた自転車の種類によって感じ方には差があります。
しかし、これまで15kg程度の軽い自転車にしか乗ったことがない人が、初めて30kg近い電動自転車を押した場合、その重量感に驚くのは無理もありません。
特に、以下のような状況で「重い」という口コミが生まれやすいようです。
- 購入前に試乗や押し歩き体験をせず、デザインや走行性能だけで選んでしまった。
- マンションの駐輪場が立体式やラック式で、毎回持ち上げる必要がある環境だった。
- 自宅周辺に坂道や狭い道が多く、押し歩きする機会が想定より多かった。
- 子供乗せモデルを選んだが、子供を乗せた状態での取り回しの重さを甘く見ていた。
これらの口コミは、決してネガティブな情報というわけではなく、これから電動自転車を選ぼうとしている人にとっては、非常に重要な「先輩からのアドバイス」と捉えることができます。
「走行は楽でも、押し歩きには相応の重さがある」という事実をあらかじめ認識しておくことで、購入後のギャップを減らすことができます。
また、近年ではメーカー側もこの「押し歩きの重さ」という課題を認識しており、後述する「押し歩きアシスト機能」を搭載したモデルや、軽量化を追求したモデルを開発しています。
口コミを参考にしつつ、自分の利用環境や体力に合ったモデルを選ぶことが、後悔しない電動自転車選びの鍵となります。
平均的な重さはどれくらい?
では、実際に電動自転車はどれくらいの重さがあるのでしょうか。
一般的な自転車と比較しながら、モデル別の平均的な重量を見てみましょう。
自転車の種類 | 平均的な重量 | 特徴 |
一般的な自転車(シティサイクル) | 15kg 〜 20kg | 最も普及しているタイプ。カゴ付きでも比較的軽い。 |
電動自転車(シティサイクルモデル) | 25kg 〜 28kg | 日常使い向け。アシストユニットの分、重くなる。 |
電動自転車(子供乗せモデル) | 30kg 〜 35kg | チャイルドシートや頑丈なフレームでさらに重量が増す。 |
電動自転車(スポーツモデル/E-BIKE) | 15kg 〜 25kg | 軽量なフレーム素材やコンパクトなユニットで軽量化されているものが多い。 |
電動自転車(折りたたみモデル) | 18kg 〜 22kg | 持ち運びを想定しているが、それでも一般的な折りたたみ自転車よりは重い。 |
このように表で比較すると、電動自転車が一般的な自転車に比べて、最低でも5kg以上、子供乗せモデルに至っては15kg近くも重いことが一目瞭然です。
2Lのペットボトルを2〜3本、あるいは7〜8本余分に積んでいると想像すると、その重量感がイメージしやすいかもしれません。
ただし、これはあくまで平均的な数値です。
スポーツモデルの中には、高価なカーボンフレームなどを採用し、15kg台という驚異的な軽さを実現しているものもあります。
逆に、大容量バッテリーや両立スタンド、頑丈なキャリアなどを装備したシティサイクルモデルでは、30kgに迫る重量になることもあります。
自分の欲しいモデルがどの程度の重量なのか、購入前にカタログや公式サイトでスペックをしっかりと確認することが非常に重要です。
電動自転車は押し歩きすると重い?軽くするコツは?

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電動自転車の押し歩きが重いのは事実ですが、だからといって諦める必要はありません。
ちょっとしたコツを知っているだけで、その負担は驚くほど軽減されます。
さらに、最近ではメーカーの技術開発により、押し歩きの重さを根本的に解決する便利な機能も登場しています。
ここでは、重い押し歩きを「軽くする」ための具体的な方法や、モデル選びのポイントについて詳しく解説していきます。
便利な「押し歩き機能」とは?
電動自転車の「押し歩きの重さ」という課題を、技術の力で解決してくれるのが「押し歩きアシスト機能」です。
これは、近年多くのメーカーが採用を進めている、まさに救世主とも言える機能です。
「押し歩きアシスト機能」とは、その名の通り、自転車を押して歩く際にモーターが作動し、軽い力で前に進むのをサポートしてくれる機能です。
手元にあるスイッチの「押し歩きボタン」などを押している間だけ、時速1kmから数km程度の、人が歩く速さに合わせたごく低速のアシストが作動します。
この機能の最大のメリットは、何と言ってもその手軽さと効果の高さです。
- 子供や重い荷物を乗せた状態での坂道発進
- 立体駐輪場のスロープを上る時
- 向かい風が強い日の押し歩き
このような、特に力が必要となる場面で絶大な効果を発揮します。
まるで、後ろから誰かにそっと背中を押してもらっているような感覚で、30kgを超える重い車体でも楽々と押して歩くことができます。
道路交通法施行規則により、この押し歩きアシストの速度は時速6km未満に制限されており、安全にも配慮されています。
ボタンから手を離せばアシストはすぐに停止するため、暴走する心配もありません。
ただし、この便利な機能も万能ではありません。
あくまで「歩く」速さの補助であるため、階段などで自転車を持ち上げる際には役立ちません。
また、全てのモデルに搭載されているわけではないため、この機能を重視する場合は、購入前に搭載の有無を必ず確認する必要があります。
主要な自転車メーカーの多くが、子供乗せモデルや日常使いのシティサイクルモデルを中心に、この押し歩きアシスト機能の搭載を拡大しています。
押し歩きの機会が多いと予想される方は、この機能が付いているモデルを積極的に検討する価値は非常に高いでしょう。
押し歩き機能がなくても軽くするコツは?
お使いの電動自転車に押し歩き機能がついていない場合や、機能を使うほどではない少しの移動の際に役立つ、押し歩きを軽くする物理的なコツをご紹介します。
これらのテクニックは、身体の使い方を少し工夫するだけで実践できます。
- ハンドルの持ち方を変える
- 体全体で押す意識を持つ
- 自転車との距離を保つ
まず、「ハンドルの持ち方」です。
多くの人は、無意識に両手でハンドルグリップを握って押しているのではないでしょうか。
この体勢は、腕の力だけで自転車をコントロールしようとするため、非常に疲れやすくなります。
コツは、利き手でサドルの先端(または後部)を持ち、もう片方の手でハンドルの中央付近(ステムの近く)を軽く支えるように持つことです。
サドルを持つことで、自転車の重心に近い部分を直接コントロールでき、ふらつきを抑えられます。
また、腰の近くで自転車を支える形になるため、腕だけでなく体幹の力も使いやすくなります。
次に、「体全体で押す意識」が重要です。
腕の力だけで押そうとすると、すぐに限界が来ます。
そうではなく、自分の体重を前進する力に変えるイメージを持ちましょう。
一歩踏み出す際に、腰から前に出るように意識し、その力を自転車に伝えていく感じです。
背筋を伸ばし、少し前傾姿勢になることで、効率よく力を伝えることができます。
最後に、「自転車との距離」です。
自転車に体を近づけすぎると、操作が窮屈になり、バランスを崩しやすくなります。
逆に離れすぎると、力がうまく伝わりません。
腕が軽く曲がるくらいの、適度な距離感を保つことが大切です。
この距離を保つことで、とっさのふらつきにも対応しやすくなり、安定した押し歩きが可能になります。
これらのコツは、慣れるまで少し練習が必要かもしれませんが、一度身につけてしまえば、押し歩きの負担を大幅に軽減できるはずです。
押しても軽いモデルを選ぶ方法は?
これから電動自転車を購入する方で、押し歩きの重さをとにかく避けたい、という場合は、モデル選びの段階で「押しても軽いモデル」を意識することが最も効果的です。
では、どのような点に注目して選べば良いのでしょうか。
ポイントは以下の3つです。
- 車体重量が軽いモデルを選ぶ
- モーターの引きずり抵抗が少ないモデルを選ぶ
- タイヤのサイズが小さいモデルを選ぶ
最も分かりやすい指標は、やはり「車体重量」です。
カタログスペックの「車両重量」や「総重量」の項目をチェックし、できるだけ数値の小さいモデルを選びましょう。
特に、フレームの素材に注目です。
一般的なスチール製に比べて、アルミ製のフレームは軽量性に優れています。
また、スポーツモデル(E-BIKE)は、もともと軽量な設計思想で作られているものが多く、シティサイクルモデルと比較して5kg以上軽いことも珍しくありません。
次に、目に見えない部分ですが、「モーターの引きずり抵抗」も重要な要素です。
これについては、カタログのスペック表だけでは判断が難しい部分です。
各メーカーが「ゼロ抵抗モーター」「スマートクロージャーモーター」といった名称で、引きずり抵抗の少なさをアピールしている場合がありますので、そうした記述があるかをチェックしましょう。
最も確実な方法は、実際に自転車販売店で試乗させてもらい、電源をオフにした状態で少し押させてもらうことです。
複数のモデルを押し比べることで、その違いを体感できるはずです。
最後に、意外と見落としがちなのが「タイヤのサイズ」です。
タイヤ径が小さい、いわゆる小径車(ミニベロ)タイプの電動自転車は、押し歩きが比較的楽な傾向にあります。
タイヤが小さいと小回りが利きやすく、重心も低くなるため、方向転換や狭い場所での取り回しがしやすくなります。
また、漕ぎ出しが軽いのと同様に、押し出しも軽く感じられるというメリットがあります。
デザイン性も高いモデルが多いため、見た目にこだわりたい方にもおすすめです。
これらのポイントを総合的に判断し、自分の体力や利用シーンに合った、できるだけ「押して軽い」モデルを選ぶことが、購入後の満足度を高めることに繋がります。
サドルの高さを調整すると楽になる?
サドルの高さを適切に調整することで、押し歩きは楽になります。
走行時のサドルの高さは、「ペダルが一番下に来た時に膝が軽く曲がる程度」が基本とされていますが、押し歩きを多用する場合は、少しだけサドルを下げてみることをお勧めします。
なぜなら、サドルを少し下げることで、以下のようなメリットがあるからです。
- サドルを持って押しやすくなる
- 自転車の重心が下がり、安定性が増す
- とっさの時に足がつきやすくなる
先ほど、「軽くするコツ」でサドルを持って押す方法を紹介しました。
サドルが高すぎると、この体勢が取りにくく、腕が上がってしまって不自然な力が入ってしまいます。
サドルを少し下げ、自分の腰骨くらいの高さに合わせることで、無理のない姿勢でサドルを掴み、楽に押せるようになります。
また、サドルを下げることは、自転車全体の重心を下げることにも繋がります。
重心が低いほど物体は安定するため、押し歩き中のふらつきを軽減する効果が期待できます。
特に子供乗せモデルのように、もともと重心が高い自転車では、この効果はより顕著に感じられるでしょう。
ただし、サドルを下げすぎると、今度は走行時にペダルが漕ぎにくくなり、膝を痛める原因にもなりかねません。
あくまで「少しだけ」下げるのがポイントです。
自分の身長や体格に合わせて、走行の快適性を損なわない範囲で、押し歩きがしやすいベストな高さを探してみてください。
クイックリリース式のシートクランプであれば、工具を使わずに簡単に高さを調整できるため、状況に応じて高さを変えるという使い方も可能です。
押し歩きに最適なギアは?
押し歩きをする際に、変速ギアは何速に入れておくのが良いのでしょうか。
意識したことがない方も多いかもしれませんが、実はギアの選択も押し歩きのしやすさに影響します。
最適なギアは、「一番軽いギア(1速や2速)」です。
その理由は、押し歩き中に誤ってペダルに足が当たってしまった時の挙動に関係しています。
自転車のギアは、数字が小さいほど「軽いギア」、大きいほど「重いギア」となります。
重いギア(例えば7速や8速)に入っている状態でペダルが少しでも回ると、後輪が大きく回転しようとします。
これにより、自転車が前にガクンと進んでしまい、バランスを崩したり、前の人や物にぶつかりそうになったりして危険です。
一方、一番軽いギア(1速)に入れておけば、仮にペダルが回ってしまっても、後輪の回転は最小限に抑えられます。
自転車が急に飛び出すのを防ぎ、安定した状態で押し歩きを続けることができます。
また、軽いギアに入れておくことで、モーター内部の抵抗がわずかに軽減されるという説もありますが、主な理由はペダルが回った際の安全性確保と安定性向上です。
特に、人混みの中や狭い駐輪場など、慎重な操作が求められる場面では、あらかじめギアを一番軽いものに変えておく習慣をつけると良いでしょう。
これは電動自転車に限らず、すべての変速機付き自転車に共通するテクニックです。
荷物を軽くする工夫は?
車体やモーターといった根本的な部分以外で、押し歩きの負担を軽減するために最も手軽にできるのが「荷物を軽くする」工夫です。
当たり前のことのように聞こえますが、意識するだけで大きく変わります。
例えば、スーパーでの買い物を終えた後、駐輪場まで距離がある場合を考えてみましょう。
前カゴや後部カゴに、お米や飲み物といった重い荷物が満載の状態では、押し歩きの負担は最大級になります。
このような場合、以下のような工夫が考えられます。
- 重い荷物だけを先にカートで運ぶ、あるいはエコバッグに入れて肩にかけて運ぶ
- 可能であれば、自転車を駐車場の出口に近い場所に停めておく
- 日々の買い物をこまめに行い、一度に運ぶ荷物の量を減らす
また、日常的に自転車に積みっぱなしにしている不要な荷物がないかも見直してみましょう。
使っていないレインコートや、古くなったブランケット、子供のおもちゃなどがカゴの底に眠っていないでしょうか。
数百グラムの差でも、積み重なれば大きな重量になります。
チャイルドシートの付け外しも一つの方法です。
子供を乗せない日は、可能であればチャイルドシートを取り外すことで、数キロの軽量化が可能です。
もちろん、頻繁な付け外しは手間がかかるため現実的ではないかもしれませんが、長期間使わない場合などは検討の価値があります。
押し歩きが大変だと感じる時ほど、まずは自転車に余計な重りが乗っていないかを確認する。
このシンプルな習慣が、日々の負担を着実に減らしてくれるはずです。
まとめ:電動自転車は押し歩きすると重い?

自転車ライフナビ・イメージ
この記事では、多くの方が抱く「電動自転車は押し歩きすると重い?」という疑問について、その原因から具体的な解決策まで、多角的に掘り下げてきました。
改めて内容を振り返ってみましょう。
電動自転車の押し歩きが重いと感じる主な原因は、バッテリーやモーターを搭載することによる「車体重量の増加」、電源オフ時の「モーターの引きずり抵抗」、そして重量物の配置による「特有の重心バランス」にありました。
特に、30kgを超えることも珍しくない子供乗せモデルでは、お子様を乗せた際の総重量と高い重心により、その負担はさらに大きくなります。
インターネット上の「重くて後悔した」という口コミは、こうした物理的な事実に裏付けられたものであり、購入前に「押し歩きには相応の重さがある」と認識しておくことが重要です。
しかし、その「重さ」は決して克服できない問題ではありません。
近年、多くのメーカーが開発に力を入れている「押し歩きアシスト機能」は、ボタン一つで坂道や重い荷物を乗せた状態での押し歩きを劇的に楽にしてくれる画期的な機能です。
この機能がないモデルでも、「サドルを持って体全体で押す」「ギアを一番軽くしておく」「サドルの高さを調整する」といった、誰でも実践できる物理的なコツを掴むことで、体感的な負担を大幅に軽減することが可能です。
さらに、これから購入を検討する段階であれば、選択肢はさらに広がります。
軽量なアルミフレームやスポーツモデルを選ぶ、引きずり抵抗の少ないモーターを搭載したモデルを選ぶ、小回りの利く小径車を選ぶなど、モデル選びの工夫次第で、押し歩きの快適性は大きく変わります。
電動自転車は、私たちの生活をより豊かで便利なものにしてくれる素晴らしい乗り物です。
その一方で、押し歩きという、乗車時とは異なる側面があることも事実です。
走行時の快適さだけに目を向けるのではなく、駐輪場での取り回しや、歩道での押し歩きといった日常のワンシーンを具体的に想像し、ご自身の体力や利用環境に合った一台を見つけることが、後悔しない電動自転車選びの何よりの秘訣と言えるでしょう。
この記事が、あなたの電動自転車に対する不安を解消し、快適なサイクルライフを送るための一助となれば幸いです。