「フル電動自転車で捕まったらどうなるんだろう?」
「見た目が自転車に近いステルスタイプなら、バレずに乗れるんじゃないか?」
そんな疑問や淡い期待を抱き、インターネットで情報を探しているあなたへ。
手軽で便利な移動手段として魅力的に映るフル電動自転車ですが、その裏には大きなリスクが潜んでいます。
「知らなかった」では済まされない厳しい罰則、そして取り返しのつかない事故の可能性。
近年、法改正や取り締まり強化の動きが活発化しており、「ステルスだから大丈夫」という考えはもはや通用しません。
この記事では、フル電動自転車にまつわる法律の現状、捕まった場合の具体的な流れ、そして「ステルス走行」という考えがいかに危険であるかを、徹底的に、そして誰にでもわかるように解説していきます。
軽い気持ちで手を出して後悔する前に、まずはこの記事で正しい知識を身につけてください。
あなたの未来を守るための、大切な情報がここにあります。
フル電動自転車で捕まった事例とステルス走行の危険性

自転車ライフナビ・イメージ
フル電動自転車、あるいはモペットと呼ばれる乗り物が、大きな社会問題となりつつあります。
ペダルを漕がなくても、スロットルをひねるだけで進むこれらの車両は、日本の法律上「原動機付自転車(原付)」に分類されるものがほとんどです。
しかし、その多くは原付として必要な保安基準を満たさず、ナンバープレートの登録や自賠責保険の加入もされないまま公道を走行しています。
その結果、交通違反や事故が後を絶たず、警察による取り締まりも年々強化されています。
この章では、フル電動自転車を取り巻く法的な環境や、ステルス走行がいかに危険な幻想であるかについて、具体的な事例を交えながら深く掘り下げていきます。
フル電動自転車の法律改正と今後の見通し
フル電動自転車に関する法規制は、ここ数年で大きく変化し、今後もさらに厳しくなることが予想されます。
まず、大前提として理解しなければならないのは、ペダルを漕がずにモーターの力だけで走行できる車両は、道路交通法上「原動機付自転車」または「自動車」に該当するという事実です。
これは昔から変わらない法律の根幹部分です。
多くのフル電動自転車は、モーターの定格出力によって原付一種(50cc以下相当)に分類されます。
つまり、運転するには原付免許が必要であり、ヘルメットの着用、ナンバープレートの表示、自賠責保険への加入、そして道路運送車両法が定める保安基準(ライト、ウィンカー、ブレーキ、ミラーなど)を満たしていることが絶対条件となります。
最近の大きな法改正としては、2023年7月1日に施行された「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」制度が挙げられます。
これは電動キックボードなどの新しいモビリティに対応するためのものであり、一部では「規制緩和」と捉えられがちですが、フル電動自転車の多くはこの特定小型原付の基準を満たしていません。
この誤解が、違法なフル電動自転車の蔓延を助長している一因ともいえます。
今後の見通しとして、警察庁は悪質な違反者への取り締まりを全国的に強化していく方針を明確に示しています。
事故の増加や、歩行者の安全を脅かす走行が問題視されており、これ以上の野放しはできないという社会的な要請も高まっています。
将来的には、販売業者に対する規制強化や、車両の型式認定制度の厳格化など、法律そのものがさらに改正される可能性も十分に考えられます。
「今はまだ大丈夫」という考えは通用せず、いつ法律が改正され、より厳しい罰則が科されるようになってもおかしくない状況なのです。
特定小型原付との違いは?規制緩和の誤解
2023年7月の道路交通法改正によって新設された「特定小型原動機付自転車」の制度は、多くの人々に規制緩和というイメージを与えました。
しかし、この制度はフル電動自転車の多くを合法化するものでは決してありません。
この点を誤解していると、意図せずして重大な法律違反を犯すことになります。
特定小型原付と、一般的なフル電動自転車(原付一種に該当)との違いを、以下の表で明確に比較してみましょう。
比較項目 | 特定小型原動機付自転車 | 一般的なフル電動自転車(原付一種扱い) |
運転免許 | 不要(16歳以上) | 必要(原付免許以上) |
ヘルメット | 努力義務 | 着用義務 |
最高速度 | 20km/h(車道)/ 6km/h(特例モード時歩道) | 30km/h |
ナンバープレート | 必要(専用の小型サイズ) | 必要(通常の原付サイズ) |
自賠責保険 | 加入義務あり | 加入義務あり |
保安基準 | 最高速度表示灯、ウィンカー、前照灯などが必須 | 前照灯、尾灯、ブレーキランプ、ウィンカー、ミラーなどが必須 |
走行場所 | 車道、自転車道、普通自転車専用通行帯、特例モードで一部の歩道 | 車道のみ(第一通行帯) |
この表を見れば一目瞭然ですが、特定小型原付として認められるためには、非常に厳しい要件をクリアしなければなりません。
特に「最高速度20km/h」という制限と、「最高速度表示灯」の設置が大きな壁となります。
市販されているフル電動自転車の多くは、簡単に時速30km以上が出せてしまうため、この時点で特定小型原付の基準から外れます。
また、見た目が自転車に似ているからといって、ペダルが付いていれば何でも許されるわけではありません。
モーターを止めてペダルだけで走行している状態であっても、車両そのものが原付としての構造を持っている以上、運転者は原付の法律に従う義務があります。
「規制緩和されたから、免許なしで乗れるようになった」という安易な解釈は、違法行為への第一歩です。
自分の乗ろうとしている車両が、どの法規に該当するのかを正しく理解することが、すべての基本となります。
強化されるフル電動自転車の取り締まり状況
「自分は捕まらないだろう」という楽観的な考えは、もはや過去のものです。
全国の警察は、フル電動自転車や電動キックボードによる交通違反や事故の急増を受け、取り締まり体制を大幅に強化しています。
これまでは黙認されていたようなケースでも、今後は厳しく摘発されると考えて間違いありません。
警察庁は全国の都道府県警察に対し、これらの違法車両に対する指導・取り締まりを強化するよう通達を出しています。
特に、通勤・通学時間帯の駅周辺や、交通量の多い幹線道路、歩行者の多い市街地などで、集中的な取り締まりキャンペーンが頻繁に実施されるようになりました。
警察官は、もはや「見た目が自転車だから」という理由で見逃すことはありません。
彼らは専門的な知識を持ち、どの車両が違法であるかを瞬時に見分ける訓練を受けています。
ペダルを漕がずに進む不自然な挙動、本来あるべき保安部品(ミラーやウィンカー)の欠如、ナンバープレートの有無など、チェック項目は多岐にわたります。
実際に、新聞やテレビのニュースでは、フル電動自転車の運転者が無免許運転や整備不良で検挙される事例が頻繁に報道されています。
中には、悪質なケースとして逮捕に至る事案も発生しており、社会的な問題としての認識が急速に広まっています。
取り締まりが強化されている背景には、悲惨な交通事故の存在があります。
音が静かで速度が出るフル電動自転車は、歩行者や他の自転車にとって非常に危険な存在です。
気づかずに飛び出してきて衝突する事故や、運転者がコントロールを失って転倒する事故が多発しており、中には死亡事故に至ったケースもあります。
このような状況を受け、警察は市民の安全を守るという強い使命感のもと、取り締まりを一層厳格化しているのです。
「運が悪ければ捕まる」のではなく、「公道を走ればいずれ必ず捕まる」という認識を持つべきです。
モペットで捕まった事例から学ぶ違反内容
実際にフル電動自転車(モペット)で検挙された人々は、どのような違反を問われているのでしょうか。
報道されている事例や警察の発表から、主な違反内容を学ぶことで、そのリスクの具体性を理解することができます。
最も多く、そして最も重い違反が「無免許運転」です。
前述の通り、フル電動自転車の多くは原付に該当するため、運転には原付免許が必要です。
自動車免許を持っていれば運転できますが、免許を一切持っていない人が運転すれば、それは無免許運転という重大な犯罪行為となります。
次に多いのが、「整備不良(保安基準違反)」です。
具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- ナンバープレートを取り付けていない
- バックミラー(後写鏡)がない
- ウィンカー(方向指示器)が点灯しない、または装備されていない
- ブレーキランプ(制動灯)が点灯しない、または装備されていない
- ヘッドライト(前照灯)が点灯しない、または暗すぎる
- 警音器(クラクション)が鳴らない
これらの装置は、安全に公道を走行するために法律で義務付けられているものです。
一つでも欠けていれば、整備不良として取り締まりの対象となります。
さらに、「自賠責保険(共済)未加入」も深刻な違反です。
これは、事故の被害者を救済するための最低限の保険であり、加入は法律上の義務です。
未加入で運転することは、他人の生命や身体に対する責任を放棄しているに等しい行為と見なされます。
その他にも、以下のような一般的な交通違反で捕まるケースが後を絶ちません。
- ノーヘルメット(乗車用ヘルメット着用義務違反)
- 信号無視
- 一時不停止
- 歩道走行
- 二人乗り(乗車定員違反)
これらの違反は、一つひとつは軽微に見えるかもしれませんが、複数が重なることで悪質と判断され、厳しい処分につながる可能性があります。
捕まった事例は、決して他人事ではないのです。
違法電動自転車の罰則と運転者の責任
違法なフル電動自転車を運転した場合、運転者には刑事罰、行政処分、そして民事責任という、三つの重い責任がのしかかります。
「少しの罰金で済むだろう」という甘い考えは、現実とかけ離れています。
まず、刑事罰について見ていきましょう。
主な違反行為に対する罰則は以下の通りです。
違反行為 | 罰則 |
無免許運転 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
自賠責保険未加入 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
ナンバープレート不表示 | 50万円以下の罰金 |
整備不良(制動装置等) | 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
ノーヘルメット | 罰則なし(ただし違反点数1点) |
信号無視 | 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
特に無免許運転の罰則は非常に重く、初犯であっても正式な裁判となり、高額な罰金刑が科される可能性が高いです。
次に、運転免許を持っている人が違反した場合の行政処分です。
交通違反にはそれぞれ違反点数が定められており、過去の累積点数に応じて免許停止や免許取消といった処分が下されます。
違反行為 | 違反点数(非反則行為の場合) |
無免許運転 | 25点(免許取消、欠格期間2年) |
無保険運行 | 6点(免許停止) |
整備不良(制動装置等) | 2点 |
乗車用ヘルメット着用義務違反 | 1点 |
信号無視(赤色等) | 2点 |
無免許運転は一発で免許取消となる極めて重い違反です。
たとえ自動車免許を持っていたとしても、フル電動自転車での違反が原因で、その大切な免許を失うことになるのです。
そして、最も恐ろしいのが、事故を起こした場合の民事責任です。
自賠責保険に未加入の状態で人身事故を起こせば、被害者の治療費や休業損害、慰謝料、後遺障害が残った場合の逸失利益など、数千万円から場合によっては億単位にのぼる損害賠償金を、全額自己負担で支払わなければなりません。
これは、人生そのものを破綻させかねない、計り知れないリスクです。
軽い気持ちで乗った一台の違法自転車が、あなたの未来すべてを奪う可能性があることを、決して忘れてはいけません。
ステルスだからバレないという考えは危険
インターネット上や一部の利用者の間で、「ステルス性の高いモデルなら警察にバレない」という情報がまことしやかに囁かれています。
ここで言う「ステルス」とは、見た目が普通の自転車に酷似しており、モーターやバッテリーが目立たないデザインの車両を指します。
しかし、この「バレない」という考えは、極めて危険で、甘い幻想に過ぎません。
まず、交通取り締まりを行う警察官は、プロフェッショナルです。
彼らは日々、様々な車両や運転者を見ており、違法なフル電動自転車特有の特徴や挙動を熟知しています。
例えば、以下のような点は、遠くからでも容易に識別できます。
- 上り坂をペダルを漕がずにスイスイと登っていく。
- 信号待ちからの発進時に、ペダルを漕ぐ動作がない。
- 車体に不自然な太さのフレームや、後付け感のあるボックス(バッテリー)がある。
- 本来の自転車にはない、スロットルレバーやスイッチ類、太い配線が見える。
これらの特徴は、いくらデザインを工夫しても完全にごまかすことは困難です。
特に「ペダルを漕がずに進む」という挙動は決定的であり、これだけで職務質問の十分な理由となります。
さらに、「音が静かだからステルス性が高い」という考え方も、安全面から見れば大きな欠点です。
接近してくる車両の音は、歩行者や他の自転車、自動車の運転者が危険を察知するための重要な情報です。
音がしないということは、相手に自分の存在を気づかれにくいということであり、出会い頭の衝突事故などを誘発する大きな原因となります。
つまり、ステルス性を追求することは、自ら事故のリスクを高めているのと同じことなのです。
万が一事故を起こしてしまった場合、「ステルスだからバレないと思った」という言い訳は一切通用しません。
むしろ、意図的に法律を逃れようとしていた悪質なケースと判断され、より重い社会的・法的な責任を問われることになるでしょう。
「バレない」のではなく、「まだ捕まっていないだけ」。
その危険な賭けに、あなた自身の未来を預ける価値は全くありません。
フル電動自転車で捕まったらどうなる?ステルスの末路

自転車ライフナビ・イメージ
「もし、フル電動自転車に乗っていて警察に止められたら…?」
違法性を認識しながら乗っている人なら、一度は考えたことがあるかもしれません。
その先には、一体どのような手続きが待っているのでしょうか。
警告だけで済むのか、それとももっと深刻な事態に発展するのか。
この章では、実際に警察に検挙された場合の具体的な流れから、ナンバープレートや自賠責保険の重要性、そして職務質問で違法性が発覚する典型的なケースまで、あなたが直面するであろう現実を包み隠さず解説します。
「ステルス」という淡い期待が打ち砕かれた後、どのような末路が待っているのかを直視してください。
警察に捕まったらどうなる?具体的な流れ
フル電動自転車で走行中に警察官から停止を求められた場合、その後の流れは違反の程度によって大きく異なりますが、多くは厳しい手続きが待っています。
まず、一般的な流れを段階的に見ていきましょう。
- 停止命令と職務質問
パトカーや白バイ、あるいは交番の警察官から「止まってください」と声をかけられます。
走行挙動や車両の外観から、違法性を疑われている状態です。
ここで逃走すれば、公務執行妨害などの別の罪に問われる可能性があります。
- 車両の確認
警察官は、あなたが乗っている車両が本当に「自転車」なのか、それとも「原動機付自転車」なのかを詳しく確認します。
電源のオンオフ、スロットルの有無、モーターの存在などをチェックし、ペダルを漕がずに走行できることを実証させられることもあります。
- 違反内容の告知
車両が原付に該当すると判断されれば、無免許運転、整備不良、無保険など、該当する違反が次々と告知されます。
この時点で、単なる「注意」で終わる可能性は極めて低いでしょう。
- 交通切符(赤切符)の交付
無免許運転や無保険運行といった重大な違反は「非反則行為」とされ、青切符(交通反則告知書)ではなく、赤切符(告知票・免許証保管証)が交付されます。
これは、反則金を納めて終わりではなく、刑事手続きに移行することを意味します。
- 警察署での取り調べ
多くの場合、その場で警察署へ任意同行を求められ、違反に至った経緯などについて詳しく事情聴取を受けます。
なぜ違法な車両に乗っていたのか、どこで購入したのかなどを聞かれ、供述調書が作成されます。
- 検察庁への送致(書類送検)
警察での捜査が終わると、事件は検察庁に送られます。
これを「書類送検」と呼びます。
その後、検察官が起訴するかどうかを判断します。
- 刑事罰の決定
検察官が起訴を決定すれば、簡易裁判所などで裁判が開かれ、罰金刑などの刑事罰が言い渡されます。
無免許運転の場合、数十万円単位の罰金を覚悟しなければなりません。
このように、一度捕まってしまえば、非常に時間的、精神的、そして金銭的な負担を強いられることになります。
「警告で済むだろう」という甘い考えは、決して持たないでください。
ナンバープレートなしでの走行は即アウト
フル電動自転車で公道を走る上で、ナンバープレートの有無は、その車両が合法的か違法かを判断する最も分かりやすい指標の一つです。
ナンバープレートがない状態で走行していることは、それだけで「私は法律を守るつもりがありません」と公言しているようなものです。
なぜナンバープレートがそれほど重要なのでしょうか。
その役割は大きく二つあります。
一つは、「車両の識別」です。
ナンバープレートがあることで、その車両が誰のもので、どこで登録されたのかが即座にわかります。
これにより、盗難の防止や、交通事故、交通違反が起きた際の運転者の特定が容易になります。
もう一つは、「納税の証明」です。
原付には、軽自動車税という地方税が課せられます。
ナンバープレートは、この税金を納めていることの証明でもあるのです。
ナンバープレートを付けずに走行することは、脱税行為に他なりません。
市区町村の役所で手続きをすれば、ナンバープレートは比較的簡単に交付されます。
しかし、そのためには「販売証明書」や「譲渡証明書」など、その車両の出所を証明する書類が必要です。
そして何より、ナンバープレートを取得するということは、自身の車両が「原動て付自転車」であることを公的に認め、法律に従う意思を示す行為です。
警察官から見れば、ナンバープレートのないフル電動自転車は、取り締まるべき対象としてこれ以上ないほど明確な存在です。
職務質問を受けた際に、ナンバープレートがなければ、その時点で言い逃れは一切できません。
整備不良(番号標表示義務違反)はもちろんのこと、そこから無免許、無保険といった他の違反が芋づる式に発覚していくことになります。
「後で付けようと思っていた」「手続きが面倒だった」といった言い訳は通用しません。
公道を走る資格がない車両で公道を走るという行為そのものが、即座にアウトなのです。
自賠責保険への加入は運転者の義務
「もし事故を起こしてしまったら…」
フル電動自転車に乗る上で、最も考えなければならないリスクが人身事故です。
その万が一の事態に備えるための最低限のセーフティネットが、「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」です。
これは、原付を含むすべての自動車に加入が義務付けられている強制保険であり、運転者の基本的な義務です。
自賠責保険の目的は、交通事故の「被害者救済」です。
加害者に十分な賠償能力がない場合でも、被害者が治療費や慰謝料などを確実に受け取れるようにするための制度です。
この保険に加入せずに公道を走行することは、「自動車損害賠償保障法」という法律に違反する犯罪行為です。
違反した場合の罰則は、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と非常に重く、さらに違反点数6点が加算され、即座に免許停止処分となります。
しかし、罰則以上に恐ろしいのは、実際に人身事故を起こしてしまった場合の結果です。
自賠責保険に加入していれば、被害者の傷害に対して最高120万円、後遺障害に対して最高4000万円、死亡させてしまった場合に最高3000万円が保険金として支払われます。
もし未加入であれば、これらの賠償金をすべて自分で支払わなければなりません。
例えば、相手に重い後遺障害を負わせてしまった場合、裁判所から数千万円、場合によっては1億円を超える損害賠償を命じられるケースも珍しくありません。
そうなれば、自己破産しても支払い義務はなくならず、一生をかけて償い続けることになります。
自賠責保険は、コンビニエンスストアや郵便局、保険代理店などで、ステッカーと証明書を即日発行してもらえるなど、加入手続きは非常に簡単です。
年間数千円の保険料を惜しんだがために、自分と被害者の人生を破滅に追い込む。
そんな愚かな選択をしては絶対になりません。
自賠責保険への加入は、他人への思いやりであり、自分自身を守るための最低限の責任なのです。
見た目でバレる?フル電動自転車の見分け方
「自分のフル電動自転車は見た目が普通だから、バレないはず」
そう信じたい気持ちはわかりますが、残念ながらその考えは通用しません。
毎日、街中で交通を見守っている警察官の目はごまかせませんし、最近では一般の人々の間でも違法車両への認識が広まっています。
では、具体的にどのような点が見分けるポイントになるのでしょうか。
警察官や詳しい人がチェックしているのは、以下のような特徴です。
- 最も決定的で不自然な挙動:「ペダルを漕いでいないのに進む」
これが一番の判断材料です。特に信号からの発進時や、登り坂での挙動は一目瞭然です。
アシストの範囲を超えた力強い加速は、フル電動機能を疑わせる十分な理由になります。
- 足元のスイッチやペダル周り:
ペダル付近に、本来の自転車にはない電源スイッチや切り替えスイッチが取り付けられていることがあります。
- ハンドル周りの装置:
バイクのスロットルのような、ひねるタイプのアクセルや、親指で押すレバータイプのアクセルが付いているのは、フル電動自転車の典型的な特徴です。
- 車体の構造と装備品:
- 極端に太いタイヤや、頑丈すぎるフレーム。
- シート下に大きなバッテリーボックスが搭載されている。
- ナンバープレート、バックミラー、ウィンカーといった原付に必要な保安部品がない。
- 不自然に多い、または太い配線類がフレームに沿って這わされている。
これらのポイントは、単体では判断が難しい場合もありますが、複数が組み合わさることで、その車両の違法性はほぼ確実となります。
「自転車です」と言い張っても、これらの客観的な証拠の前では説得力がありません。
警察官は、これらの特徴を総合的に判断し、職務質問へと移行します。
見た目でバレないと考えるのは、あまりにも楽観的すぎるのです。
むしろ、違法であることを隠そうとする不自然な振る舞いが、かえって怪しまれる原因になることさえあります。
職務質問で違法性が発覚するケースとは?
では、どのような状況で警察官から声をかけられ、職務質問に至るのでしょうか。
警察官は、やみくもに誰でも呼び止めているわけではありません。
そこには、何らかの法令違反や、交通の安全を害する危険な挙動がきっかけとして存在します。
違法性が発覚する典型的なケースは、以下の通りです。
- 明らかな交通違反を犯す:
これが最も多いきっかけです。
信号無視、一時不停止、右側通行、歩道走行、夜間の無灯火走行など、基本的な交通ルールを守らない運転は、当然ながら警察官の目に留まります。
違反を注意するために車両を停止させ、その際にフル電動機能が発覚するパターンです。
- 不自然な走行挙動:
前述の通り、「ペダルを漕がずに進む」のは最大の不審点です。
他にも、周囲の交通状況に比べて速すぎるスピードで走行したり、逆に警察の姿を見て急に減速したり、道を避けたりする挙動は、何かを隠していると疑われる原因になります。
- 整備不良が外見から明らか:
ナンバープレートがない、ミラーが付いていない、あるいは折れているなど、保安基準を満たしていないことが外から見て明らかな場合も、職務質問の対象となります。
これは、運転者が安全意識に欠けていることの現れと見なされます。
- ヘルメットの不着用:
フル電動自転車は原付扱いですから、ヘルメットの着用が義務です。
ノーヘルで走行している姿は、それだけで「私は違反しています」とアピールしているのと同じです。
警察官にとって、これ以上ないほど分かりやすい取り締まりのターゲットとなります。
- 集団での危険走行:
複数台で連なって信号無視をしたり、歩道を占拠して走行したりする行為は、非常に悪質であり、周囲に与える威圧感や危険性も高まります。
このような場合、警察は積極的に介入し、厳しく取り締まります。
これらのケースからわかるように、違法なフル電動自転車に乗っているという事実そのものが、他の違反を誘発し、結果的に検挙につながるリスクを高めているのです。
一つの嘘を隠すために、次々と嘘を重ねていくようなものと言えるでしょう。
公道走行不可の車両を運転するリスク
インターネット通販サイトなどでは、魅力的なデザインや性能を謳ったフル電動自転車が数多く販売されています。
しかし、その商品説明をよく見ると、「公道走行不可」「私有地での使用に限ります」といった注意書きが小さく添えられていることが少なくありません。
この「公道走行不可」という表示を無視して公道を運転する行為は、単なる交通違反にとどまらない、極めて深刻なリスクを伴います。
まず、法的なリスクです。
「公道走行不可」と明記されている車両は、そもそも日本の道路運送車両法が定める保安基準を満たすように設計・製造されていません。
ブレーキの性能、車体の強度、灯火類の明るさなど、安全に関わるあらゆる部分が、国の基準を満たしていないのです。
このような車両で公道を走ることは、販売者の警告を無視した、意図的で悪質な法令違反と見なされます。
事故を起こした際に、「知らなかった」という言い訳は一切通用せず、運転者の責任はより重く問われることになります。
次に、物理的な危険性です。
保安基準を満たしていないということは、その車両がいつ壊れてもおかしくない状態であるということです。
走行中に突然ブレーキが効かなくなったり、フレームが折れたりする可能性もゼロではありません。
特に、安価な海外製品の中には、品質管理がずさんなものも多く含まれています。
そのような危険な乗り物で、自分だけでなく、周囲の人の生命をも危険に晒すことになるのです。
さらに、事故が起きた際の保険適用の問題もあります。
仮に任意の自動車保険に加入していたとしても、「公道走行不可」の車両で起こした事故については、保険契約の重大な告知義務違反と見なされ、保険金が支払われない可能性があります。
そうなれば、莫大な損害賠償をすべて自己負担することになり、経済的に破綻してしまいます。
「私有地で乗る分には問題ない」というのは事実ですが、その私有地から一歩でも公道に出た瞬間、その車両は法律の規制を受ける「違法車両」に変わります。
安易な気持ちで「公道走行不可」の車両に手を出すことは、自ら時限爆弾に乗るようなものだと、強く認識してください。
まとめ:フル電動自転車で捕まった!ステルス走行の嘘

自転車ライフナビ・イメージ
この記事を通じて、フル電動自転車にまつわる厳しい現実を多角的に解説してきました。
「フル電動自転車で捕まったらどうなるのか」、そして「ステルス走行ならバレないのではないか」というあなたの疑問に対し、その答えは明確です。
フル電動自転車(モペット)の公道走行は、無免許運転をはじめとする数々の法律違反に該当する可能性が極めて高く、一度検挙されれば、高額な罰金や免許取消といった厳しい処分が待っています。
それは単なる行政手続きではなく、前科としてあなたの経歴に残る、紛れもない刑事事件なのです。
「ステルスだからバレない」という考えは、危険な幻想に過ぎません。
警察官はプロの目で車両の不審点を見抜き、あなたの走行挙動を監視しています。
むしろ、音が静かであること自体が、歩行者や他の車両にあなたの存在を知らせず、悲惨な事故を引き起こす大きなリスクとなります。
バレないための工夫は、安全を犠牲にする行為に他なりません。
ナンバープレートを付けず、自賠責保険にも加入せずに公道を走る。
それは、事故を起こした際の責任をすべて放棄し、被害者の人生を踏みにじる可能性を容認する行為です。
軽い気持ちで乗った一台の違法な乗り物が、あなたの未来、社会的信用、そして経済的な安定のすべてを奪い去る力を持っています。
手軽さや格好良さという目先の魅力に惑わされてはいけません。
法律は、あなたと、あなたの周りのすべての人々の安全を守るために存在します。
どうか、安易な道を選ばず、法律を遵守した安全な交通手段を選択してください。
それが、あなた自身の未来を守るための、唯一正しい道なのです。