自転車に乗っていると、誰しもがいつかは経験するタイヤトラブル。
「なんだか最近空気が抜けるのが早いな」「タイヤの溝がすり減ってきたかも」と感じたとき、タイヤやチューブの交換を考えるのではないでしょうか。
しかし、いざ交換しようとすると「値段はいくらくらいかかるの?」「自分でできるものなの?」「そもそも、どのサイズのタイヤを選べばいいのかわからない」といった疑問が次々と湧いてくるものです。
この記事では、そんな自転車のタイヤ・チューブ交換に関するあらゆる疑問を解決します。
ご自身で交換する場合と自転車屋さんに依頼する場合の値段の比較から、最も重要なタイヤサイズの正しい見方、そして初心者でも失敗しない交換方法の具体的な手順まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
この記事を最後まで読めば、あなたはもうタイヤ交換で迷うことはありません。
安全で快適な自転車ライフのために、ぜひ正しい知識を身につけていきましょう。
自転車のタイヤチューブ交換の値段と適正サイズの選び方

自転車ライフナビ・イメージ
自転車のタイヤとチューブを交換しようと決めたとき、最初に気になるのはやはり「費用」と「どのパーツを選べばいいか」という点でしょう。
特にサイズ選びは、間違えてしまうと全く使えないため、非常に重要です。
このセクションでは、交換にかかる値段の相場から、失敗しないためのタイヤ・チューブのサイズの確認方法、そして交換時期の目安までを詳しく解説していきます。
まずはここをしっかりと押さえることが、スムーズなタイヤ交換への第一歩です。
自転車のタイヤ交換を自分でする場合の値段
ご自身でタイヤ交換を行う、いわゆるDIYの場合、主な費用は部品代と、もし持っていなければ初期投資としての工具代になります。
最大のメリットは、なんといっても自転車屋さんに支払う工賃がかからないため、費用を安く抑えられることです。
部品代は、自転車の種類や選ぶパーツのグレードによって大きく変動します。
以下に、一般的な自転車の種類ごとの部品代の目安をまとめてみました。
部品名 | シティサイクル(ママチャリ) | クロスバイク | ロードバイク |
タイヤ(1本) | 1,500円~3,000円 | 2,500円~5,000円 | 4,000円~10,000円 |
チューブ(1本) | 500円~1,000円 | 800円~1,500円 | 1,000円~2,000円 |
リムテープ(1本) | 200円~500円 | 300円~800円 | 500円~1,200円 |
合計(1輪あたり) | 2,200円~4,500円 | 3,600円~7,300円 | 5,500円~13,200円 |
このように、一般的なシティサイクルであれば、前後両方のタイヤとチューブを交換しても5,000円から10,000円程度に収まることが多いです。
一方で、ロードバイク用の高性能なタイヤは1本で1万円を超えるものも珍しくありません。
これに加えて、交換作業に必要な工具を揃える必要があります。
- タイヤレバー:500円~1,500円
- 空気入れ:2,000円~5,000円
- レンチ類(ホイール着脱用):1,000円~3,000円
すでに工具を持っている場合は部品代だけで済みますが、初めて挑戦する場合は、これらの初期投資も考慮に入れておきましょう。
一度揃えてしまえば、今後のパンク修理などにもずっと使えるため、長い目で見れば非常にお得です。
自転車屋にタイヤ交換を頼んだ時の値段
時間がない方や、自分で作業する自信がない方は、プロである自転車屋さんに依頼するのが最も安心で確実な方法です。
自転車屋さんに頼んだ場合の費用は、「部品代」と「交換工賃」の合計金額になります。
工賃は、お店や地域によって差がありますが、一般的には以下のような相場になっています。
- 前輪のタイヤ・チューブ交換工賃:1,500円~3,000円
- 後輪のタイヤ・チューブ交換工賃:2,000円~4,000円
後輪の工賃が前輪よりも高いのは、変速機やチェーン、スタンド、泥除けなどが絡み合い、作業工程が複雑になるためです。
したがって、部品代と工賃を合わせた合計金額の目安は以下のようになります。
交換箇所 | 部品代+工賃の合計目安(1輪あたり) |
前輪(シティサイクル) | 3,700円~7,500円 |
後輪(シティサイクル) | 4,200円~8,500円 |
もちろん、これは一般的なシティサイクルの場合であり、クロスバイクやロードバイク、電動アシスト自転車などは、さらに工賃が高くなる傾向があります。
また、注意点として、自分で購入したタイヤやチューブを持ち込んで交換を依頼する場合(パーツ持ち込み)は、通常の工賃よりも割高に設定されていたり、場合によっては安全性の観点から作業を断られたりすることもあります。
事前にそのお店の方針を確認しておくのが良いでしょう。
費用はかかりますが、プロによる確実な作業で安全性が担保されること、そして何より自分の時間と手間がかからないことが、自転車屋さんに依頼する大きなメリットと言えます。
タイヤ・チューブのサイズの確認方法
タイヤ交換で最も重要かつ、初心者がつまずきやすいのが「サイズの確認」です。
これを間違えると、せっかく購入したタイヤやチューブが無駄になってしまいます。
サイズの確認は、必ず現在お使いの自転車についているタイヤの側面を見て行います。
タイヤの側面には、メーカー名やモデル名とともに、必ずサイズを示す数字が刻印されています。
例えば、シティサイクルでよく見かける表記は「26 x 1 3/8」のような形式です。
- 「26」:タイヤの外径(インチ)
- 「1 3/8」:タイヤの太さ(インチ)
これだけを見ると簡単そうですが、実は自転車のタイヤサイズ表記にはいくつかの規格が混在しており、単純なインチ表記だけを頼りにすると、互換性のない違うサイズを選んでしまうという罠があります。
例えば同じ「26インチ」と書かれていても、マウンテンバイクで使われる「26 x 1.75」と、シティサイクルの「26 x 1 3/8」とでは、ホイールの直径が異なるため、全く互換性がありません。
そこで、より確実にサイズを特定するために重要になるのが、「ETRTO(エトルト)」という規格の表記です。
チューブのサイズは、チューブ本体に印字されているか、購入時の箱に記載されています。
チューブの箱には「26 x 1 3/8」といったタイヤサイズと、「28/32-590」のようなETRTO表記の両方が書かれていることが多く、このタイヤサイズに対応しているということを示しています。
ETRTO(エトルト)表記とは?
ETRTO(エトルト)とは、「European Tyre and Rim Technical Organisation」の略で、ヨーロッパのタイヤとリムの技術組織が定めた世界共通の規格です。
このETRTO表記こそが、サイズ間違いを防ぐための最も確実な指標となります。
ETRTO表記は、タイヤの側面に「〇〇-〇〇〇」という形式で記載されています。
例えば、「37-590」という表記があった場合、それぞれの数字は以下の意味を表しています。
- 「37」:タイヤの幅(ミリメートル)
- 「590」:タイヤがはまるホイール(リム)の直径(ビード径)(ミリメートル)
この「リムの直径」が非常に重要です。
前述したように、「26インチ」という呼び名が同じでも、ETRTOのリム径が「559mm」のものと「590mm」のものがあり、これらは全く互換性がありません。
しかし、ETRTO表記で「590」という数字さえ合わせておけば、リム径が同じであることが保証されるため、サイズを間違う心配がなくなるのです。
タイヤを選ぶ際は、まずこのETRTO表記を確認することを徹底しましょう。
サイズを間違えないための選び方
それでは、これまでの情報を元に、サイズを間違えずに新しいタイヤとチューブを選ぶための具体的な手順をまとめます。
以下のステップで確認すれば、まず失敗することはありません。
- 古いタイヤの側面を確認し、「ETRTO表記」を見つけるまずは今ついているタイヤの側面をじっくりと見て、「37-590」のようなETRTO表記を探してください。これが全ての基準になります。
- 新しいタイヤは、ETRTOの「後ろの3桁」が同じものを選ぶ新しいタイヤを購入する際は、ETRTO表記の「-」の後ろの数字(リム径)が、古いタイヤと完全に一致しているものを選びます。前の数字(タイヤ幅)は、多少違っても装着可能な場合がありますが、基本的には同じ幅のものを選ぶのが無難です。太くする場合は、フレームや泥除けに干渉しないか確認が必要です。
- チューブは、新しいタイヤのサイズに対応しているものを選ぶチューブのパッケージには、対応するタイヤのサイズ範囲が記載されています。例えば、「26 x 1 3/8 (37-590)」というタイヤに合わせるなら、チューブのパッケージにも同様の表記があることを確認します。チューブはある程度の太さの範囲に対応できるものがほとんどです。
- バルブの種類を確認するサイズと合わせて、空気を入れる「バルブ」の種類も確認必須です。主に以下の3種類があります。
- 英式バルブ:シティサイクル(ママチャリ)に最も多いタイプ。黒いゴムキャップが特徴。
- 米式バルブ:マウンテンバイクやBMXに多いタイプ。自動車やバイクと同じ構造。
- 仏式バルブ:ロードバイクやクロスバイクに多いタイプ。先端のネジを緩めてから空気を入れる。
今使っているチューブと同じ種類のバルブを選ばないと、ホイールのバルブ穴の大きさが合わなかったり、持っている空気入れが使えなかったりするトラブルの原因になります。
タイヤが劣化する原因と交換時期
タイヤはゴム製品なので、使っていてもいなくても時間と共に劣化が進行します。
安全に関わる重要なパーツだからこそ、適切な時期に交換することが大切です。
タイヤが劣化する主な原因には、以下のようなものがあります。
- 紫外線:直射日光に当たり続けると、ゴムの油分が抜けて硬化し、ひび割れの原因になります。保管場所は室内や日陰が理想です。
- 空気圧の不足:空気圧が低いまま走行すると、タイヤが過度に変形し、側面(サイドウォール)に負荷がかかってひび割れや亀裂が入りやすくなります。
- 経年劣化:走行距離が短くても、ゴムは時間と共に自然に劣化し、硬くなったり弾力性を失ったりします。
- 雨水や油分:雨に濡れたまま放置したり、油分が付着したりすることもゴムの劣化を早める要因です。
では、具体的にどのような状態になったら交換のサインなのでしょうか。
以下の項目を定期的にチェックしてみてください。
- 表面のひび割れ:タイヤの接地面や側面に、無数の細かいひび割れが見られたら劣化のサインです。
- 溝の摩耗:タイヤの溝が浅くなったり、消えかかったりしている状態。スリップしやすくなり危険です。タイヤによっては摩耗度を示す「スリップサイン」があるものもあります。
- ケーシングの露出:タイヤのトレッド(接地面のゴム)が摩耗し、その下にある網目状の層(ケーシング)が見えてきたら、即交換が必要です。バースト(破裂)の危険性が非常に高い状態です。
- サイドウォールの膨らみや亀裂:タイヤの側面が部分的に膨らんでいたり、深い亀裂が入っていたりする場合も危険な兆候です。
- パンクの頻発:特に原因が見当たらないのに、頻繁にパンクを繰り返す場合は、タイヤの裏側が劣化してチューブを傷つけている可能性があります。
明確な交換時期として「〇年」や「〇〇km」という基準を示すのは難しいですが、一般的には使用開始から2~3年、走行距離にして3,000km~5,000kmが一つの目安とされています。
しかし、これはあくまで目安です。最も重要なのは、走行距離や年数にかかわらず、上記のような劣化のサインが見られたら速やかに交換することです。
自転車のタイヤチューブ交換の方法と失敗しないための注意点

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値段の相場と正しいサイズの選び方がわかったら、次はいよいよ実践編です。
ご自身でタイヤ・チューブ交換に挑戦してみたいという方のために、ここからは必要な道具から具体的な作業手順、そして初心者が陥りがちな失敗例とその対策まで、丁寧に解説していきます。
特に作業が複雑になりがちな後輪の交換についても、コツを紹介しますのでご安心ください。
手順通りに落ち着いて作業すれば、決して難しいことではありません。
交換に最低限必要なものリスト
まずは、作業を始める前に必要なものをすべて揃えましょう。
作業途中で「あれがない!」と慌てることがないように、事前にしっかりと準備しておくことが成功の秘訣です。
以下に、最低限必要なものと、あると作業がよりスムーズになるものをリストアップしました。
最低限必要なもの
- 新しいタイヤ:サイズとバルブの種類を間違えずに用意したもの。
- 新しいチューブ:タイヤのサイズに対応したもの。
- タイヤレバー:タイヤをホイールから外したりはめたりする際に使う専用のヘラ。プラスチック製のものがホイールを傷つけにくくおすすめです。最低でも2本、できれば3本あると作業が格段に楽になります。
- 空気入れ:新しいチューブのバルブ形式(英式・米式・仏式)に対応したもの。空気圧ゲージ付きのものを選ぶと、適正な空気圧管理ができて理想的です。
- ホイール着脱用の工具:ホイールを自転車のフレームから外すための工具です。シティサイクルなどのナットで固定されているタイプは、ナットのサイズに合ったレンチ(スパナやメガネレンチ)が必要です。一般的には14mmや15mmがよく使われます。クロスバイクやロードバイクの場合は、工具不要のクイックリリースレバーが主流です。
- 軍手:手を汚さず、また怪我を防ぐために用意しましょう。
あると便利なもの
- リムテープ:ホイールのリムの内側に貼り、スポークの頭からチューブを守るテープです。タイヤ交換時に劣化やズレが見られたら、同時に交換するのがおすすめです。
- ウエス(布):パーツの汚れを拭き取るのに使います。
- パーツクリーナー:油汚れなどをきれいにする際に便利です。
- ゴムのり・パッチセット:万が一、作業中に新品のチューブを傷つけてしまった場合の応急処置用として。
タイヤチューブ交換の簡単な手順
道具が揃ったら、いよいよ交換作業に入ります。
ここでは、最も基本的な手順をステップバイステップで解説します。
焦らず、一つ一つの工程を丁寧に行いましょう。
- 自転車を安定させる作業しやすいように、自転車をひっくり返してサドルとハンドルで安定させます。スタンドが付いている場合は、スタンドで立てたままでも作業可能です。
- ブレーキを解放するタイヤをホイールごと外すために、ブレーキを解放してクリアランスを広げます。Vブレーキの場合はワイヤーを外し、キャリパーブレーキの場合は解放レバーを上げます。
- ホイールを車体から外すレンチを使ってハブ軸のナットを緩めるか、クイックリリースレバーを解放して、ホイールをフレームから取り外します。
- タイヤの空気を完全に抜くバルブのキャップを外し、プランジャー(虫ゴム)を緩めるか押すなどして、タイヤ内の空気を完全に抜き切ります。
- 片側のビードをリムから外すタイヤレバーを、タイヤとリムの隙間に差し込みます。バルブの反対側あたりから始めると作業しやすいです。1本目のレバーを差し込んでビードをリムの外側に起こしたら、そのレバーをスポークに引っ掛けて固定します。次に、1本目から10cmほど離れた場所に2本目のレバーを差し込み、同様にビードを起こします。これを繰り返していくと、片側のビード全体がリムから外れます。
- 古いチューブを取り出す片側のビードが外れたら、バルブ部分から順に、古いチューブをタイヤの中から全て引き出します。
- タイヤをリムから完全に取り外すチューブを抜き取ったら、タイヤ全体をリムから取り外します。手で簡単に外れることが多いです。
- リムの内側とタイヤの内側を点検するリムの内側に貼られているリムテープがずれたり劣化していないか確認します。ずれてスポーク穴が見えている場合は、新品に交換しましょう。また、取り外した古いタイヤの内側を指でなぞり、パンクの原因となったガラス片や小石などが残っていないか確認します。
- 新しいタイヤの片側ビードをリムにはめる新しいタイヤの回転方向を示す矢印マークがあれば、進行方向と合うように注意しながら、まずは片側のビードだけをリム全体にはめ込みます。
- 新しいチューブに少しだけ空気を入れる新しいチューブをいきなり入れると中でねじれたり噛み込んだりする原因になります。軽く空気を入れて、うっすらと形が整う程度にしておくと、作業がしやすくなります。
- チューブをタイヤの中に入れるまずバルブをリムの穴に通し、そこから順にチューブ全体をタイヤとリムの間に均等に収めていきます。
- もう片方のビードをリムにはめるいよいよ最後のビードをはめていきます。バルブの反対側から、両手の親指を使って少しずつビードをリムの内側に押し込んでいきます。最後の方は硬くなりますが、できるだけタイヤレバーを使わずに手ではめ込むのが、チューブを傷つけないコツです。どうしても硬い場合は、タイヤレバーを慎重に使いますが、この時チューブを挟まないように細心の注意を払います。
- チューブを噛んでいないか確認するビードが全てはまったら、タイヤの両側面を内側に押し込み、チューブがタイヤのビードとリムの間に噛み込まれていないか、全周にわたって確認します。
- 適正空気圧まで空気を入れる噛み込みがないことを確認したら、タイヤの側面に記載されている「適正空気圧」の範囲内で空気を入れます。空気を入れる過程で、ビードが均等にリムに上がってきているかも確認しましょう。
- ホイールを車体に戻し、ブレーキを元に戻す外した時と逆の手順でホイールを車体に取り付け、ナットをしっかりと締めます。最後に、解放したブレーキを元の状態に戻し、正常に作動するか、タイヤがブレーキに干渉しないかなどを確認して完了です。
前輪の交換で気をつけること
前輪の交換は、後輪に比べて構造がシンプルなため、初心者の方でも比較的取り組みやすいでしょう。
ただし、いくつか注意すべき点があります。
まず、ナットで固定されているタイプの自転車では、ナットの締め付け具合が重要です。
緩すぎると走行中に脱輪する危険があり、締めすぎるとハブの回転が悪くなったり、パーツを破損させたりする原因になります。
「適度に、しかし確実に締める」という感覚ですが、不安な場合は自転車屋さんで一度見てもらうと良いでしょう。
クイックリリースレバーの場合は、レバーの締め方が重要です。
レバーを手のひらでぐっと押し込んで、閉じた時に手のひらに跡がつくくらいの強さが目安です。
また、タイヤを取り付ける際には、回転方向の指定がないか確認しましょう。
特にトレッドパターンがV字型になっているタイヤなどは、転がり抵抗や排水性の観点から回転方向が指定されていることがあります。
タイヤの側面に矢印(ROTATION →)で示されているので、必ず確認してから装着してください。
後輪交換は難しい?コツを紹介
多くの人が「後輪交換は難しい」と感じる最大の理由は、変速機(ディレイラー)とチェーンが絡んでくるためです。
しかし、いくつかのコツを押さえておけば、作業の難易度をぐっと下げることができます。
- 作業前に写真を撮っておくこれは最も簡単で効果的な方法です。ホイールを外す前に、変速機周りやチェーンの掛かり方、各種ワイヤーの取り回しなどを、スマートフォンのカメラで様々な角度から撮影しておきましょう。元に戻す際に「あれ、どうなってたっけ?」と迷った時の、完璧なカンニングペーパーになります。
- 変速ギアを一番外側に入れておく作業を始める前に、リアの変速機を一番重いギア(一番外側にある、最も小さいスプロケット)に変速しておきましょう。こうすることで、チェーンが最も外側に移動し、ホイールを外したりはめたりする際にチェーンが邪魔になりにくくなります。
- チェーンをうまく扱うホイールを外す際は、変速機(リアディレイラー)のケージ部分を後ろに引きながら、ホイールを手前に引くとスムーズに外れます。逆に取り付ける際は、まずスプロケットをチェーンの上下の間に正しく通し、一番小さいギアにチェーンを乗せることを意識しながら、ホイールをフレームにはめ込みます。
シティサイクル(内装変速機や変速なし)の場合は、チェーン引きというパーツの調整が必要になることがあります。
チェーンがたるみ過ぎず、張り過ぎない適切な張り具合に調整するのがポイントです。
後輪交換は確かに工程が多いですが、一つ一つのパーツの役割を理解しながら、焦らず丁寧に進めれば必ずできます。
初心者がやりがちな失敗例
ここでは、初めてタイヤ交換に挑戦する方が陥りやすい典型的な失敗例と、その対策をまとめました。
これを知っておくだけで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
- 失敗例1:チューブの噛み込み最も多い失敗です。タイヤのビードをリムにはめ込む際に、チューブを一緒に挟んでしまい、穴を開けてしまうケース(通称:噛み込みパンク)。
対策:最後のビードを手ではめ込むことを基本とし、タイヤレバーを使う際は慎重に行う。ビードが全てはまった後、空気を入れる前に必ず全周をチェックする。
- 失敗例2:タイヤレバーでチューブを傷つける古いタイヤを外す際や、硬いビードをはめる際に、タイヤレバーの先端でチューブをこすったり、突き刺してしまったりするケース。
対策:レバーを差し込みすぎないように注意する。チューブに少し空気を入れておくことで、チューブがタイヤの内側で自立し、レバーとの接触を避けやすくなる。
- 失敗例3:リムテープのズレによるパンクタイヤとチューブを完璧に交換できても、リムテープがずれていてスポークの穴が露出し、その角でチューブが傷ついてパンクするケース。
対策:タイヤを外した際に、必ずリムテープの状態を確認し、ずれていたり劣化していたりしたら迷わず交換する。
- 失敗例4:バルブが斜めになるチューブを入れる際に、バルブが根本から斜めになってしまい、空気を入れると根本に負荷がかかって裂けてしまうケース。
対策:チューブを入れる際は、まずバルブをリム穴にまっすぐ通し、最後にバルブを少し押し込んで、根本がビードに噛まれていないか確認する。
これらの失敗は、いずれも「焦らず、丁寧に、確認を怠らない」ことで防ぐことができます。
チューブのみ交換はあり?
パンクした際、「タイヤはまだ新しいから、チューブだけ交換すればいいのでは?」と考える方は多いでしょう。
結論から言うと、その判断は「ケースバイケース」です。
チューブのみの交換で良い場合
- 釘や画鋲が刺さったなど、パンクの原因が明確で、タイヤ自体に大きな損傷がない場合。
- タイヤがまだ新しく、ひび割れや摩耗などの劣化が見られない場合。
このようなケースでは、原因となった異物を取り除けば、チューブのみの交換で問題ありません。
タイヤとチューブを同時に交換すべき場合
- タイヤの摩耗や劣化が原因でパンクした場合。例えば、タイヤが薄くなったことで中のチューブが地面の衝撃で傷ついたり(リム打ちパンク)、タイヤのひび割れから細かい砂利などが侵入してチューブを傷つけたりするケースです。この場合、チューブだけ交換しても、根本原因であるタイヤがそのままなので、すぐにまたパンクしてしまいます。
- タイヤの表面や内側に、パンクの原因となったガラス片などが突き刺さったままになっている場合。取り除いたつもりでも、微細な破片が残っていることがあります。
- タイヤの交換時期の目安(ひび割れ、摩耗など)に達している場合。
基本的には、タイヤとチューブは一心同体のパーツであり、消耗品です。
安全性を最優先に考えるなら、「タイヤが劣化したタイミングで、チューブも一緒に交換する」のが最も確実で、結果的に手間も省ける賢い選択と言えるでしょう。
まとめ:自転車のタイヤチューブ交換は値段とサイズの見方が重要

自転車ライフナビ・イメージ
今回は、自転車のタイヤ・チューブ交換について、値段の相場からサイズの選び方、具体的な交換方法までを網羅的に解説してきました。
この記事の重要なポイントを改めて振り返ってみましょう。
まず、交換にかかる費用は、ご自身でDIYに挑戦すれば部品代だけで済み、シティサイクルなら1輪あたり2,000円台から可能です。
一方、自転車屋さんに依頼すれば工賃はかかりますが、プロによる作業で確実な安心感を得られます。
ご自身のスキルや時間、予算に合わせて最適な方法を選びましょう。
そして、交換作業において何よりも大切なのが、「正しいサイズのパーツを選ぶこと」です。
インチ表記だけに頼らず、必ずタイヤの側面に刻印された「ETRTO」という世界共通規格の数字を確認してください。
このETRTO表記のリム径(ハイフンの後ろの3桁の数字)さえ合わせておけば、サイズ間違いという最も基本的な失敗を確実に防ぐことができます。
また、バルブの種類(英式・米式・仏式)を合わせることも忘れてはいけません。
交換作業そのものは、手順を一つ一つ丁寧に踏んでいけば、初心者の方でも十分に可能です。
特に、後輪交換のような複雑に思える作業も、事前に写真を撮っておくなどのコツを押さえれば、決して乗り越えられない壁ではありません。
しかし、もし作業に少しでも不安を感じたり、うまくいかなかったりした場合は、決して無理をせず、迷わずプロである自転車屋さんを頼ってください。
安全に関わるパーツだからこそ、確実な状態にしておくことが最も重要です。
日頃から空気圧を適正に保つなどの簡単なメンテナンスを心がけることが、タイヤを長持ちさせ、予期せぬトラブルを防ぐことにも繋がります。
この記事で得た知識を活かして、あなたの自転車がより安全で快適なパートナーであり続けることを願っています。