「最近、自転車を漕ぐとペダルが重く感じる…」「ギアチェンジの時にガチャガチャと嫌な音がする…」そんな経験はありませんか?
その不調の原因は、もしかしたら汚れた「チェーン」にあるのかもしれません。
自転車の心臓部ともいえるチェーンは、走行中に雨水や泥、ホコリなどの汚れを最も受けやすいパーツです。
汚れたまま放置してしまうと、走行性能の低下はもちろん、思わぬ故障や事故につながる可能性も潜んでいます。
しかし、いざチェーンの掃除をしようと思っても、「専用の道具や洗剤は高そうだし、手順も難しそう…」と躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな自転車メンテナンス初心者の方に向けて、実は「100均」で手に入る身近なアイテムと、ご家庭にある「食器用中性洗剤」を使って、誰でも簡単に自転車チェーンをピカピカにする方法を徹底解説します。
専門的な知識や高価な機材は一切不要です。
この記事を読めば、あなたも今日から愛車のメンテナンスを始められ、より快適で安全な自転車ライフを手に入れることができるでしょう。
なぜ必要?自転車チェーンを掃除する効果と頻度

自転車ライフナビ・イメージ
自転車のチェーン掃除は、単に見た目をきれいにするだけではありません。
快適な走りを維持し、自転車そのものの寿命を延ばすために不可欠なメンテナンスです。
ここでは、チェーン掃除がもたらす具体的な効果と、掃除を怠った場合のリスク、そして理想的な掃除の頻度について詳しく解説していきます。
チェーン掃除を怠ると思わぬトラブルの原因に
汚れたチェーンは、様々なトラブルを引き起こす元凶となります。
具体的にどのような問題が発生するのか、主なものをいくつか見ていきましょう。
- 走行性能の低下
チェーンに砂やホコリ、古い油などが固着すると、チェーンの動きがスムーズでなくなり、ペダルを漕ぐ力(駆動力)がうまく伝わらなくなります。
結果として、ペダルが重く感じられたり、同じように漕いでいるはずなのにスピードが出にくくなったりします。
- 不快な異音の発生
「キーキー」「ガチャガチャ」「ジャリジャリ」といった異音は、チェーンとギア(スプロケット)がうまく噛み合っていないサインです。
汚れによって潤滑が不足したり、金属同士が直接こすれたりすることで、不快な音が発生します。
- 変速(ギアチェンジ)の不具合
チェーンやギアが汚れていると、変速操作をしてもスムーズにギアが変わらなくなります。
特定のギアに入りにくくなったり、意図しないタイミングでギアが変わってしまったりと、変速性能が著しく低下します。
- チェーン落ち
走行中にチェーンがギアから外れてしまう「チェーン落ち」は、非常に危険なトラブルです。
汚れや潤滑不足でチェーンの動きが渋くなっていると、段差の衝撃などでチェーンが暴れ、外れやすくなります。
- パーツの摩耗と寿命の低下
汚れたチェーンは、ヤスリのようにギアを削ってしまいます。
砂や金属粉を含んだ油汚れが研磨剤の役割を果たし、チェーンだけでなく、高価なパーツであるギア(スプロケットやクランク)まで急速に摩耗させてしまうのです。
パーツの寿命が縮まれば、交換費用も高額になります。
- サビの発生
雨天走行後などに濡れたまま放置すると、チェーンはあっという間に錆びてしまいます。
サビはチェーンの強度を低下させ、最悪の場合、走行中にチェーンが切れてしまう危険性もあります。
これらのトラブルは、定期的なチェーン掃除で未然に防ぐことができます。
どのくらいの頻度で掃除するのが理想?
チェーン掃除の理想的な頻度は、自転車の乗り方や保管状況によって大きく異なります。
一概に「何週間に一度」と決めるのではなく、ご自身の状況に合わせて判断することが大切です。
以下に、一般的な目安をいくつか示します。
走行頻度・環境 | 掃除の目安 | 具体的な状況 |
毎日通勤・通学で乗る | 2週間~1ヶ月に1回 | 舗装路を毎日10km程度走行する場合。汚れが目立ってきたら早めに。 |
週末にサイクリングを楽しむ | 1ヶ月に1回 または 走行距離300km~500kmごと | 晴天時のサイクリングロード走行がメインの場合。 |
雨の日も乗る | 雨天走行後は毎回 | 雨水や泥はサビの最大の原因です。走行後は必ず水分を拭き取り、乾燥させてから注油まで行いましょう。 |
オフロード(未舗装路)を走る | 走行後は毎回 | 砂や泥汚れが激しく付着するため、その都度の洗浄が必須です。 |
室内保管でたまにしか乗らない | 3ヶ月~半年に1回 | 乗らなくてもホコリは溜まります。長期間放置する前には掃除と注油をしておくと良いでしょう。 |
上記の表はあくまで目安です。
最終的には、次の項目で説明する「掃除のサイン」を見て判断するのが最も確実です。
ここが汚れたら掃除のサイン!見逃せないポイント
自転車は、言葉で不調を訴えることができません。
そのため、私たち乗り手がそのサインに気づいてあげることが重要です。
以下のような状態が見られたら、それはチェーンが「汚れているよ」と教えてくれているサインです。
すぐに掃除をしてあげましょう。
- 見た目のサイン
- チェーンが真っ黒になっている:新品のチェーンは銀色(または金色など)ですが、汚れてくると油と泥が混ざって真っ黒になります。
- チェーンやギアに泥や砂が付着している:特に雨上がりや未舗装路を走った後は顕著です。
- チェーンのコマの間に黒い塊が詰まっている:古い油と汚れが固まった状態です。
- チェーンに赤茶色のサビが出ている:これは緊急事態です。すぐにサビを落とし、洗浄・注油が必要です。
- 音のサイン
- ペダルを漕ぐと「キーキー」「キュルキュル」と音がする:油膜が切れて金属同士がこすれている音です。潤滑不足の典型的な症状です。
- 「ジャリジャリ」「シャリシャリ」という音がする:チェーンに砂や金属粉が噛み込んでいる音です。このまま乗り続けるとパーツを激しく摩耗させます。
- 変速時に「ガチャガチャ」と大きな音がする:チェーンとギアがスムーズに噛み合っていないサインです。
- 感触のサイン
- ペダルが以前より重く感じる:汚れによる抵抗が増えている可能性があります。
- ギアチェンジがスムーズにいかない:変速機を操作しても、ワンテンポ遅れて変速したり、うまく変速しなかったりします。
これらのサインに一つでも当てはまったら、それは絶好のチェーン掃除のタイミングです。
面倒に思わずに、愛車のためのメンテナンスを行いましょう。
【100均で揃う】チェーン掃除に必要な道具と洗剤

自転車ライフナビ・イメージ
「チェーン掃除には専用のクリーナーや高価なブラシが必要なのでは?」と思われがちですが、実はその多くが100円ショップで手に入ります。
ここでは、コストを抑えつつも効果的にチェーン掃除を行うために、100均で揃えたいおすすめグッズと、家庭にある中性洗剤の活用法について詳しくご紹介します。
これだけは揃えたい!100均のおすすめ掃除グッズ
まずは、チェーンの汚れを落とすために最低限揃えておきたいアイテムです。
お近くの100円ショップの掃除用品コーナーやDIYコーナーを探してみてください。
- ブラシ類(2~3種類あると便利)
- 多目的ブラシ(デッキブラシのような形状の小さいもの):チェーンの側面や上面など、広い範囲を効率よく磨くのに適しています。硬めのナイロン毛のものがおすすめです。
- 隙間用ブラシ・サッシブラシ:チェーンのコマとコマの間や、ギアの歯と歯の間など、細かい部分の汚れをかき出すのに最適です。
- 歯ブラシ:使い古しのものでも構いませんが、100均の数本セットのものを掃除用にストックしておくと便利です。ギアの細かい隙間やプーリー(変速機にある小さな歯車)の掃除に役立ちます。
- 洗浄液を入れる容器
- スプレーボトル(霧吹き):中性洗剤を水で薄めて入れておくと、チェーン全体に均一に吹きかけることができ、作業効率が格段にアップします。
- タッパーや小さめのバケツ:洗剤を溜めてブラシを浸しながら使いたい場合に便利です。
- 汚れの拭き取り・乾燥に使うもの
- マイクロファイバークロス:吸水性・速乾性に優れており、洗浄後の水分の拭き取りや、最後の仕上げの乾拭きに最適です。数枚セットで売られていることが多いので、汚れた洗剤を拭う用と、きれいな仕上げ用で使い分けると良いでしょう。
- ウエス(布切れ):着古したTシャツやタオルなどをカットしたもので十分です。油汚れを気にせずガンガン使えるのがメリットです。洗浄後の大まかな汚れや水分の拭き取りに使います。
- その他
- ゴム手袋・ビニール手袋:油汚れや洗剤から手を保護するために必須です。作業に集中できますし、後片付けも楽になります。
- 段ボールや新聞紙:作業場所が汚れないように、自転車の下に敷くための養生材です。大きめの段ボールを開いて使うのがおすすめです。
これらのアイテムは、すべて100円ショップで手に入ります。
合計しても1,000円以下で、基本的な掃除道具一式が揃えられます。
食器用でOK?中性洗剤を洗浄に使うメリット
自転車チェーンの洗浄には、専用の「ディグリーザー」という強力な油落とし剤が販売されています。
しかし、実は家庭用の食器用洗剤の多くは「中性」であり、これがチェーン洗浄に非常に有効なのです。
なぜ食器用中性洗剤が使えるのか、そのメリットを見ていきましょう。
- 優れた洗浄力
食器用洗剤には「界面活性剤」という成分が含まれています。
これは、水と油のように本来混ざり合わないものを混ぜ合わせる働きを持っています。
チェーンにこびりついた油汚れを、界面活性剤が包み込んで浮かび上がらせ、水で洗い流せるようにしてくれるのです。
頑固な油汚れも、ブラッシングと組み合わせることで十分に落とすことが可能です。
- パーツへの優しさ
自転車のパーツには、金属だけでなくゴムやプラスチックも使われています。
強力なアルカリ性や酸性の洗浄剤は、これらの素材を傷めたり、塗装を剥がしてしまったりする可能性があります。
その点、中性洗剤は素材への攻撃性が低いため、チェーン周りのデリケートなパーツにも安心して使用することができます。
- 安全性と入手しやすさ
食器用洗剤は、毎日素手で触れることを想定して作られているため、比較的肌に優しく、安心して使えます(ただし、肌が弱い方は手袋を着用しましょう)。
また、どこの家庭にも常備されていることが多く、思い立った時にすぐに掃除を始められる手軽さも大きなメリットです。
- 経済的
専用のディグリーザーは1本1,000円以上することが多いですが、食器用洗剤なら数百円で手に入り、一回の使用量もわずかなので非常に経済的です。
このように、食器用中性洗剤は、洗浄力、安全性、経済性の面で、自転車チェーンの洗浄剤として非常に優れた選択肢なのです。
あると作業効率アップ!その他の便利アイテム
必須ではありませんが、持っていると作業がよりスムーズに進む便利なアイテムもご紹介します。
これらも100均やホームセンターで手軽に入手できるものばかりです。
- チェーンフック
チェーンを外さずに掃除をする際、チェーンをたるませて特定の箇所を掃除しやすくするための簡易的なフックです。
針金やクリップで自作することもできますが、100均のS字フックなどでも代用可能です。
これがあると、変速機のプーリー周りなどを掃除する際に非常に便利です。
- ペットボトル(洗浄やすすぎに)
使い終わった500mlのペットボトルに水を入れておき、キャップにキリで小さな穴を開ければ、簡易的な高圧洗浄機のようになります。
細かい隙間の汚れをピンポイントで洗い流したり、すすぎの際に効率よく水をかけたりするのに役立ちます。
- パーツクリーナー(油性)
「中性洗剤だけではどうしても落ちない頑固な汚れがある」という場合に備えて、ホームセンターなどで安価に売られているパーツクリーナーを1本持っておくと安心です。
ただし、ゴムやプラスチックを傷める可能性のある速乾性の高いタイプではなく、潤滑成分が含まれている「遅乾性」や「油性」と書かれたものを選ぶのがポイントです。
使用する際は、目立たない場所で試してから、金属部分にのみピンポイントで使うようにしましょう。
これらのアイテムを上手に活用することで、初心者でもプロ並みの仕上がりを目指すことができます。
【初心者でも簡単】チェーンを外さない洗浄手順

自転車ライフナビ・イメージ
道具が揃ったら、いよいよ洗浄作業に入ります。
ここでは、最も手軽で初心者におすすめの「チェーンを外さずに」行う洗浄手順を、ステップ・バイ・ステップで詳しく解説します。
一つひとつの工程を丁寧に行うことが、きれいな仕上がりへの近道です。
まずは準備から!作業場所と自転車のセッティング
本格的な作業を始める前に、まずはしっかりと準備を整えましょう。
この準備を怠ると、後片付けが大変になったり、作業がしにくくなったりします。
- 作業場所の確保と養生
チェーンの洗浄では、汚れた油や洗剤が周囲に飛び散ることがあります。
そのため、作業は屋外のベランダや庭、ガレージなど、汚れても良い場所で行うのが理想です。
マンションの共用廊下などで行う場合は、管理規約を確認し、他の住民の迷惑にならないよう配慮しましょう。
地面には、大きめの段ボールを開いたものや、新聞紙を数枚重ねて敷きます。
自転車のチェーン周りを中心に、広範囲をカバーするように敷いておくと安心です。
- 自転車の固定
作業中に自転車が倒れてしまうと危険ですし、作業効率も悪くなります。
メンテナンススタンドがあればベストですが、無い場合は壁に立てかけるなどして、自転車が安定する状態を作ります。
この時、ハンドルが壁側、後輪が作業しやすいように手前に来るように置くと良いでしょう。
ギアは、後の掃除がしやすいように、前後のギアを一番外側(アウター×トップ)に入れておくと、チェーンが張り、ブラシをかけやすくなります。
- 服装と保護具の着用
汚れても良い服装に着替えましょう。
油汚れは洗濯しても落ちにくいことがあります。
また、前述の通り、必ずゴム手袋やビニール手袋を着用して、手や爪の間に汚れが入るのを防ぎます。
準備が整ったら、いよいよ洗浄開始です。
ブラシを使った基本的な汚れの落とし方
ここがチェーン掃除のメイン工程です。
焦らず、着実に汚れを落としていきましょう。
- 乾いたブラシで大まかな汚れを落とす
まずは洗剤をつける前に、乾いた状態の多目的ブラシや歯ブラシを使って、チェーンやギアに付着した泥や砂、ホコリ、固まった汚れなどを大まかに払い落とします。
このひと手間を加えることで、後の洗剤を使った洗浄が格段に楽になります。
- 洗浄液の準備と塗布
スプレーボトルに食器用中性洗剤を数滴(500mlの水に対して5~10滴程度が目安)入れ、水を加えてよく振って混ぜ合わせます。
あまり濃すぎると、すすぎが大変になるので注意してください。
準備した洗浄液を、チェーン全体にまんべんなくスプレーします。
特に汚れがひどい部分には多めに吹きかけて、汚れに浸透させましょう。
- ブラッシング(チェーン)
洗浄液を吹きかけたら、いよいよブラシで磨いていきます。
片方の手でブラシを持ち、もう片方の手でペダルをゆっくりと「逆回転」させます。
- チェーンの上面:多目的ブラシをチェーンの上に置き、固定したままペダルを逆回転させると、チェーンがブラシの上を通過して自動的に磨かれていきます。
- チェーンの側面:同様に、チェーンの左右の側面にブラシを当てながらペダルを逆回転させます。
- チェーンの下面:下面も忘れずにブラシを当てて磨きましょう。
これを数回繰り返すと、黒い汚れた泡がたくさん出てきます。
汚れが浮き出てきた証拠です。
- ブラッシング(ギア・スプロケット)
チェーンだけでなく、ギア(専門用語ではスプロケット)も汚れています。
特に歯と歯の間には、圧縮された黒い油汚れが溜まっています。
ここに隙間用ブラシや歯ブラシを差し込み、汚れをかき出すように磨きます。
ペダルを少しずつ回しながら、全ての歯をきれいにしていきましょう。
前側の大きなギア(クランクセット)も同様にきれいにします。
汚れがひどい場合は、一度汚れた泡をウエスで拭き取り、再度洗浄液をスプレーしてブラッシングを繰り返すと効果的です。
見落としがち!細かい部分をきれいにするコツ
基本的な洗浄が終わったら、次はプロの仕上がりに差がつく「細かい部分」の掃除です。
以下のポイントを意識して、愛車を隅々までピカピカにしてあげましょう。
- チェーンのコマ(リンク)の内部
チェーンは、たくさんの小さなプレートとローラーが繋がってできています。
このプレートとプレートの間や、ローラーの内部に汚れが溜まると、チェーンのしなやかな動きが阻害されます。
歯ブラシの毛先を使い、コマの隙間に差し込むようにして、内部の汚れをかき出しましょう。
この作業は根気がいりますが、走行性能に大きく影響する部分なので丁寧に行いましょう。
- リアディレイラーのプーリー
後輪の近くにある変速機(リアディレイラー)には、「ガイドプーリー」と「テンションプーリー」という2つの小さな歯車が付いています。
チェーンは常にこのプーリーを通過するため、油汚れが非常に溜まりやすい場所です。
歯ブラシや、汚れが固まっている場合はマイナスドライバーの先端などで、歯の間に詰まった汚れを丁寧に取り除きます。
プーリーをきれいにすると、変速性能が劇的に改善されることもあります。
- フロントディレイラーのプレート
ペダル側にある変速機(フロントディレイラー)の、チェーンを左右に動かすための金属の板(プレート)の内側も、汚れがちなポイントです。
ウエスを指に巻きつけ、プレートの内側を拭き掃除しましょう。
これらの細かい部分まで掃除することで、見た目の美しさはもちろん、自転車本来の性能を最大限に引き出すことができます。
洗浄後のひと手間!すすぎと乾燥の重要性

自転車ライフナビ・イメージ
念入りに洗浄して汚れを落としても、その後の「すすぎ」と「乾燥」が不十分だと、せっかくの掃除が台無しになってしまいます。
むしろ、新たなトラブルの原因を作ってしまうことにもなりかねません。
ここでは、洗浄後の重要な仕上げ工程について解説します。
洗剤残りはNG!正しいすすぎ方のポイント
洗浄に使った中性洗剤がチェーンやギアに残っていると、いくつかの問題が発生します。
- サビの原因になる:洗剤成分が水分を呼び寄せ、金属部分にサビを発生させる原因となります。
- 新たな汚れを付着させる:残った洗剤はベタつき、走行中にホコリや砂を吸着しやすくなります。
- 注油の効果を妨げる:チェーンの表面に洗剤の膜が残っていると、後から注す潤滑油(ルブ)が金属にうまく浸透せず、十分な効果を発揮できません。
これらの問題を避けるため、すすぎは丁寧に行いましょう。
- すすぎの方法
- たっぷりの水を用意する:バケツにきれいな水を用意します。
- 水をかける:スプレーボトルや、前述の穴を開けたペットボトルを使って、チェーン全体に水をかけて洗剤を洗い流します。この時も、ペダルを逆回転させながら行うと、効率よくすすげます。
- 泡が出なくなるまで:黒い汚れや洗剤の泡が出なくなるまで、繰り返し水をかけてすすぎます。チェーンだけでなく、洗浄したギアやプーリーもしっかりと洗い流しましょう。
- 最後に全体を流す:最後に自転車のフレームなど、作業中に洗剤が飛び散った可能性のある場所も、水をかけたウエスで拭き上げるなどしてきれいにしておきましょう。
アパートやマンションなどで大量の水が使えない場合は、水を何度も替えながら、濡らしたマイクロファイバークロスで何度も拭き上げる方法でも代用できます。
とにかく「洗剤成分を残さない」ことを意識してください。
サビ防止の要!チェーンをしっかり乾燥させる方法
洗浄とすすぎが終わったチェーンは、水分を完全に除去しないと、あっという間にサビてしまいます。
特に、チェーンのコマの内部など、見えない部分の水分をしっかり取り除くことが重要です。
乾燥は、サビを防止するための最も重要な工程と言っても過言ではありません。
- 基本的な乾燥手順
- ウエスで大まかな水分を取る:まずは乾いたウエス(吸水性の高いものが望ましい)でチェーンを掴むようにし、ペダルを逆回転させて、チェーン全体の水分を大まかに拭き取ります。これを数回繰り返し、ウエスに水分がつかなくなるまで行います。
- マイクロファイバークロスで仕上げる:次に、乾いたきれいなマイクロファイバークロスを使って、さらに念入りに水分を拭き取ります。チェーンのコマを一つひとつ挟むようにして、細かい部分の水分まで吸い取りましょう。ギアやプーリーも同様に拭き上げます。
- 自然乾燥させる:拭き上げが終わったら、風通しの良い場所でしばらく放置し、自然乾燥させます。30分~1時間ほど置いておくと、表面からは見えない内部の水分も蒸発しやすくなります。
晴れた日の日中など、空気が乾燥している時に作業を行うのが理想的です。
時間がない時に!素早く乾かす裏ワザ
「すぐに乗りたい」「天気が悪くて自然乾燥が難しい」という場合には、いくつかの裏ワザがあります。
ただし、やり方によってはパーツを傷める可能性もあるため、注意点をよく理解した上で行ってください。
- ドライヤーを使う
家庭用のヘアドライヤーの温風(または冷風)を使い、チェーンを強制的に乾燥させる方法です。
- 注意点:
- あまり近づけすぎない:熱でゴムやプラスチックのパーツを変形させたり、塗装を傷めたりする可能性があるため、チェーンから15cm以上離して使いましょう。
- 一点に集中させない:ドライヤーを常に動かしながら、まんべんなく風を当てるようにします。
- 温風の使いすぎに注意:チェーンが熱くなりすぎないように、適度に冷風も交えながら行うのが安全です。
- 注意点:
- エアダスターを使う
パソコンのキーボードなどを掃除する際に使う、缶タイプのエアダスターも有効です。
強力な空気の噴射で、細かい隙間に入り込んだ水分を吹き飛ばすことができます。
特にチェーンのコマの内部や、プーリーの軸周りなど、ウエスが届きにくい場所の乾燥に効果的です。
ただし、連続して噴射すると缶が非常に冷たくなり、噴射力が落ちるので、休みながら使いましょう。
これらの方法を使えば、乾燥時間を大幅に短縮できますが、基本はやはり「拭き上げ+自然乾燥」です。
時間に余裕がある場合は、丁寧な拭き上げと自然乾燥を心がけましょう。
掃除の仕上げ!正しいチェーンへの注油(ルブ)

自転車ライフナビ・イメージ
洗浄と乾燥が完了したチェーンは、いわば「すっぴん」の状態です。
油膜が完全に除去されているため、このままではサビやすく、潤滑性もありません。
ここで行う「注油」こそが、チェーンメンテナンスの最終仕上げであり、快適な走りを実現するための鍵となります。
注油はなぜ重要?潤滑が走りを変える
洗浄によってきれになったチェーンに、新しい潤滑油(専門用語では「チェーンルブ」や「チェーンオイル」と呼びます)を差す作業を「注油」といいます。
注油には、主に3つの重要な目的があります。
- 潤滑
チェーンのリンク(コマ)やローラーがスムーズに動くようにし、チェーンとギアの摩擦抵抗を極限まで減らします。
これにより、ペダルを漕ぐ力がロスなく推進力に伝わり、驚くほど軽く滑らかな走り心地が実現します。
変速もカチッと小気味よく決まるようになります。
- 防錆(ぼうせい)
金属の表面を油の膜でコーティングすることで、水分や空気が直接触れるのを防ぎ、サビの発生を強力に抑制します。
特に、洗浄・乾燥直後の無防備なチェーンにとって、注油は必須の防錆処理です。
- 保護
油膜がクッションの役割を果たし、チェーンとギアが直接擦れ合うことによる金属摩耗を防ぎます。
また、走行中のホコリや砂が直接金属に付着するのを防ぎ、パーツの寿命を延ばす効果もあります。
注油は、単に油を差すという単純な作業ではなく、自転車の性能を最大限に引き出し、愛車を長持ちさせるための重要な投資なのです。
どれを選ぶ?目的別のチェーンルブ(オイル)の種類
自転車用のチェーンルブには、主に3つのタイプがあります。
それぞれに特徴があり、走行する環境や求める性能によって最適なものが異なります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の使い方に合ったルブを選びましょう。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | こんな人におすすめ |
ドライタイプ | 溶剤に潤滑成分(主にPTFEなど)を混ぜたもので、塗布後に溶剤が揮発し、チェーン表面に乾いた潤滑膜を形成する。サラサラした仕上がり。 | ・汚れが付着しにくい ・チェーンが黒くなりにくい ・衣服が汚れにくい |
・雨に弱い(流れやすい) ・潤滑の持続性が短い(こまめな注油が必要) |
・晴天時の走行がメインの方 ・街乗りや週末のサイクリングを楽しむ方 ・チェーンをきれいに保ちたい方 |
ウェットタイプ | 粘度の高いオイルが主成分。しっとりとした仕上がりで、強力な油膜を形成する。 | ・潤滑の持続性が高い ・雨や水に強い ・高い潤滑性と静音性 |
・汚れを吸着しやすい(チェーンが黒くなりやすい) ・定期的な洗浄が必要 ・衣服が汚れやすい |
・雨の日でも乗る方 ・長距離(100km以上)を走る方 ・悪路や過酷な環境で乗る方 |
ワックスタイプ | 液体状のワックスを塗布し、乾燥させることで固形の潤滑膜を形成する。 | ・非常に汚れにくい(最強レベル) ・高い潤滑性と静音性 |
・塗布前の完全な脱脂が必要 ・施工に手間と時間がかかる ・雨に弱いものが多い |
・決戦用のロードバイクなど ・究極の潤滑性とクリーンさを求める方 ・メンテナンスに時間をかけられる方 |
初心者の方がまず最初に試すなら、「ドライタイプ」がおすすめです。
扱いやすく、チェーンが汚れにくいため、きれいな状態を維持しやすいのが魅力です。
まずはドライタイプから始めてみて、雨天走行が多い、もっと長距離を走りたい、といったニーズが出てきたらウェットタイプを試してみるのが良いでしょう。
効果を最大化する注油のやり方と拭き取りのコツ
せっかく良いルブを選んでも、注油の仕方が間違っていると効果は半減してしまいます。
「たくさん差せば良い」というものではありません。
「適量を、適切な場所に、確実に」届けることが重要です。
- 注油する場所
注油すべき最も重要な場所は、チェーンを構成する「ローラー」の内側です。
チェーンのプレート(板)の表面に油を塗っても、潤滑にはほとんど意味がありません。
プレートとプレートの隙間、ローラーとピンが擦れ合う部分にルブを浸透させることが目的です。
- 注油の手順
- ルブの容器をよく振る:潤滑成分が沈殿していることがあるので、使用前によく振りましょう。
- チェーンのコマ(リンク)一つひとつに注油する:チェーンの下側に、ノズルを近づけます。ペダルをゆっくり逆回転させながら、チェーンのつなぎ目(ローラー部分)に「一コマずつ、一滴ずつ」丁寧にルブを垂らしていきます。これをチェーンが一周するまで続けます。目印として、チェーンのコネクティングリンク(つなぎ目の形状が違う部分)から始めると分かりやすいです。
- 浸透させる:注油が終わったら、そのままの状態でペダルをゆっくりと数十回逆回転させます。これにより、ルブがチェーンの内部までしっかりと浸透していきます。前後のギアをいくつか変速させて、チェーンを動かしてあげるのも効果的です。その後、5~10分ほど放置して、ルブが完全に浸透するのを待ちます。
- 拭き取りの重要性
ここが最も重要なポイントです。
チェーンの「表面」に余分なルブが残っていると、それが接着剤のようになり、走行中に砂やホコリをどんどん吸い寄せてしまいます。
結果、せっかくきれいにしたチェーンがすぐに真っ黒になってしまうのです。
- 拭き取りの手順:きれいなウエスやマイクロファイバークロスでチェーン全体をしっかりと掴み、ペダルを逆回転させて、表面の余分なルブを徹底的に拭き取ります。「少し拭き取りすぎかな?」と感じるくらいが丁度良いです。チェーンの表面は乾いているように見えて、内部にはしっかりとルブが残っている状態が理想です。
この「注油→浸透→拭き取り」のサイクルを正しく行うことで、チェーンは最高のパフォーマンスを発揮し、クリーンな状態を長く保つことができます。
まとめ:100均アイテムと中性洗剤で愛車をメンテナンス

自転車ライフナビ・イメージ
今回は、100円ショップで手に入る身近なアイテムと、ご家庭にある食器用中性洗剤を使った、経済的で簡単な自転車チェーンの掃除方法をご紹介しました。
チェーン掃除は、決して専門家だけが行う難しい作業ではありません。
ブラシで汚れをかき出し、洗剤で洗い、水でしっかりすすいで、乾かしてから、新しい油を差す。
この基本的なステップを踏むだけで、あなたの愛車は見違えるほど快適に走るようになります。
ペダルを漕いだ時の軽さ、スムーズな変速、そして不快な異音からの解放は、一度体験すると病みつきになるほどの感動があります。
定期的にチェーンの状態をチェックし、汚れてきたら掃除するというサイクルを習慣にすることで、チェーンやギアといったパーツの寿命を延ばし、結果的に高額な交換費用を節約することにも繋がります。
何より、自分の手で愛車をメンテナンスすることは、自転車への愛着を一層深めてくれるはずです。
この記事を参考に、ぜひ次の週末にでも、あなたの愛車のチェーンメンテナンスに挑戦してみてください。
ピカピカになったチェーンで走り出す瞬間は、きっと格別なものになるでしょう。