自転車のチェーンがたるんでいる、カチャカチャと音が鳴る。
そんな悩みを抱えていませんか。
ペダルを漕ぐ力がうまく伝わらない感覚や、走行中の異音は、チェーンの調整が必要なサインかもしれません。
チェーンのトラブルは、単に走りにくくなるだけでなく、放置すると大きな事故につながる可能性も秘めています。
この記事では、自転車のチェーン調整やコマ詰めの方法について、プロの視点から徹底的に解説します。
自分でメンテナンスに挑戦したい方のために、必要な工具の選び方から具体的な手順、注意点までを写真付きのように詳しく紹介。
また、「自分でするのは不安」「時間がない」という方のために、自転車屋さんやホームセンターに依頼した場合の料金相場や作業時間についても詳しくまとめています。
この記事を読み終える頃には、チェーンに関するあらゆる疑問が解消され、快適で安全な自転車ライフを取り戻すための知識が身についているはずです。
さあ、一緒に自転車の心臓部ともいえるチェーンのメンテナンスの世界へ踏み出しましょう。
自転車チェーンの調整はなぜ必要?交換時期のサインとは

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自転車のチェーンは、ペダルを漕ぐ力を後輪に伝える、まさに心臓部とも言える重要なパーツです。
このチェーンの状態が、自転車の走行性能や安全性に大きく影響します。
多くの人が見過ごしがちなチェーンの調整ですが、なぜ定期的なメンテナンスが必要なのでしょうか。
ここでは、チェーンが抱える問題の原因から、交換の目安、そして調整によって得られるメリットまでを詳しく掘り下げていきます。
チェーンが伸びる・たるむ原因と放置するリスク
「チェーンが伸びる」とよく言われますが、金属であるチェーンがゴムのように物理的に伸びるわけではありません。
実際には、チェーンを構成している多数のプレートやピン、ローラーといった部品が、走行を重ねることで徐々に摩耗していくのです。
この摩耗によって部品同士の間に隙間が生まれ、チェーン全体として遊びが大きくなった状態が、いわゆる「伸び」の正体です。
チェーンが伸びたり、たるんだりする主な原因は以下の通りです。
- 走行による摩耗:最も一般的な原因です。走行距離が長くなるほど、各部品の摩耗は進行します。
- 過酷な使用環境:雨天走行や泥道での走行は、チェーンに付着した水分や砂利が研磨剤のようになり、摩耗を早めます。
- メンテナンス不足:定期的な洗浄や注油を怠ると、潤滑が不足し、金属同士が直接擦れ合うことで摩耗が加速します。また、錆の発生も伸びの大きな原因となります。
- 乗り方:急発進や急停車、頻繁で急なギアチェンジはチェーンに大きな負荷をかけ、寿命を縮める一因となります。
では、このチェーンの伸びやたるみを放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。
まず、チェーンが外れやすくなります。
走行中に突然チェーンが外れると、ペダルが空転してバランスを崩し、転倒する危険性が非常に高くなります。
特に交通量の多い道路や下り坂でのチェーン脱落は、重大な事故につながりかねません。
次に、ギア(スプロケットやチェーンリング)の摩耗を早めてしまうというリスクです。
伸びたチェーンは、ギアの歯と正しく噛み合わなくなります。
その結果、ギアの歯を異常な形で削ってしまい、摩耗を促進させます。
チェーンの交換だけで済んだはずが、高価なギア一式の交換が必要になるケースも少なくありません。
さらに、走行性能も著しく低下します。
ペダルを漕いだ力がうまく伝わらない「パワーロス」が生じ、走りが重く感じられるようになります。
また、変速がスムーズに行えなくなったり、「カチャカチャ」「ガリガリ」といった不快な異音が発生したりする原因にもなります。
チェーン交換時期の目安と見極めるサイン
チェーンの調整だけでは解決できないほど摩耗が進んだ場合は、交換が必要になります。
交換時期の目安と、そのサインを見極める方法を知っておくことが重要です。
一般的な交換時期の目安は、走行距離で3,000km〜5,000km、期間にして1年〜2年程度と言われています。
しかし、これはあくまで目安であり、先述した使用環境やメンテナンスの頻度によって大きく変わります。
より正確に交換時期を見極めるためには、具体的なサインに注目しましょう。
- チェーンチェッカーを使う:最も確実な方法です。チェーンチェッカーは、チェーンの伸び率を測定するための専用工具です。
使い方は簡単で、チェッカーの先端をチェーンのコマに引っ掛けるだけ。
チェッカーが奥まで完全に入ってしまうようであれば、伸びが限界に達しているサインであり、交換が必要です。
多くのモデルでは、0.75%の伸びで交換推奨、1.0%で要交換とされています。
- チェーンを引っ張ってみる:工具がない場合の簡易的なチェック方法です。一番大きなギア(フロント側)にチェーンがかかっている状態で、チェーンの前方部分を指でつまんで引っ張ってみてください。
新品のチェーンであればほとんど浮き上がりませんが、伸びたチェーンはギアの歯から大きく浮き上がります。
歯が1つ以上完全に見えるようであれば、交換を検討すべきサインです。
- 走行中の違和感:以下のような症状が現れた場合も、チェーンの寿命が近い可能性があります。
- 変速してもスムーズにギアが変わらない、または勝手にギアが変わってしまう。
- ペダルを漕ぐと「カクッ」と歯飛びするような感覚がある。
- 特定のギアで異音が頻繁に発生する。
これらのサインを見逃さず、適切なタイミングでチェーンを交換することが、自転車全体の寿命を延ばし、安全を確保する上で不可欠です。
チェーン調整で走りはどう変わる?得られるメリット
チェーンのたるみを適切に調整したり、伸びたチェーンを新しいものに交換したりすることで、走りは劇的に改善されます。
具体的にどのようなメリットが得られるのかを見ていきましょう。
最大のメリットは、ペダリングの効率が向上し、走りが軽快になることです。
適切に張られたチェーンは、遊びが少ないため、漕いだ力がダイレクトに後輪へ伝わります。
パワーロスが少なくなることで、同じ力で漕いでもよりスムーズに、そして速く進む感覚を得られるでしょう。
坂道を登る際や、加速したい場面でその違いをはっきりと体感できるはずです。
次に、変速性能の向上が挙げられます。
特に多段変速機付きの自転車では、チェーンの状態が変速の精度に直結します。
調整されたチェーンは、ディレイラー(変速機)の指示通りにスムーズかつ静かにギア間を移動します。
これにより、ストレスのない快適なシフティングが可能になります。
また、安全性も大幅に向上します。
チェーンのたるみをなくすことで、走行中のチェーン脱落のリスクを大幅に低減できます。
予期せぬトラブルを防ぎ、安心してライディングに集中できるようになるのは、何よりのメリットと言えるでしょう。
さらに、経済的なメリットも見逃せません。
チェーンの状態を良好に保つことは、スプロケットやチェーンリングといった関連パーツの摩耗を防ぐことにつながります。
チェーンは消耗品ですが、ギア類はより高価なパーツです。
定期的なチェーンメンテナンスは、結果的に高額な修理費用を節約することにもなるのです。
このように、チェーンの調整は、単なるメンテナンスにとどまらず、あなたの自転車ライフをより快適で、安全で、経済的なものに変えてくれる重要な作業なのです。
自分できる!自転車チェーンのコマ詰めのやり方

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新しいチェーンに交換した際や、チェーンが伸びて調整範囲を超えてしまった場合に必要になるのが「コマ詰め」です。
チェーンを適切な長さにカットする作業で、少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、正しい工具と手順を理解すれば、初心者の方でも自分で行うことが可能です。
ここでは、コマ詰めに必要な道具から、具体的な手順、そして失敗しないための注意点までを丁寧に解説していきます。
コマ詰めに必要な工具と選び方|チェーンカッターは必須
自転車チェーンのコマ詰め作業において、絶対に欠かせない工具が「チェーンカッター」です。
これは、チェーンのコマを連結しているピンを押し出して抜いたり、再び圧入したりするための専用工具です。
他の工具での代用は基本的に不可能であり、無理に行うとチェーンや工具を破損させる原因となるため、必ず用意してください。
チェーンカッターを選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。
- 対応するチェーンの規格(変速段数)を確認するチェーンは、自転車の変速段数(スピード)によって厚みが異なります。
6〜8速用、9速用、10速用、11速用、12速用など、それぞれ専用のチェーンカッターが存在します。
自分の自転車の変速段数に対応した製品を選ばないと、うまく作業できないだけでなく、チェーンを傷つけてしまう可能性があります。
多くの製品はパッケージや説明書に対応段数が明記されているので、購入前に必ず確認しましょう。
迷った場合は、幅広い段数に対応する汎用タイプを選ぶのも一つの手です。
- 使いやすさと耐久性安価な簡易タイプから、プロ仕様のしっかりとした作りのものまで価格帯は様々です。
頻繁に使う予定がない場合でも、ある程度の強度と精度があるものを選ぶことをお勧めします。
ハンドルが大きく力を入れやすいものや、ガイドが付いていてチェーンをしっかり固定できるものは、作業が安定し、失敗のリスクを減らしてくれます。
チェーンカッター以外に、作業をスムーズに進めるためにあると便利な工具やアイテムもご紹介します。
- 軍手や作業用グローブ:チェーンは油で汚れているため、手を保護するために必須です。
- ウエス(汚れてもいい布):古い油を拭き取ったり、作業場を汚さないように敷いたりするのに使います。
- ラジオペンチ:チェーンの端を持ったり、コネクティングピンのプレートをはめ込んだりする際に便利です。
- チェーンフック:チェーンを切断した際に、両端が垂れ下がってしまわないように引っ掛けておくための簡易的な工具です。針金を曲げて自作することも可能です。
- 新しいチェーンやコネクティングピン:コマ詰め後にチェーンをつなぐための新しいピンやミッシングリンクを用意しておきましょう。
初心者でも簡単!チェーンのコマを詰める手順を解説
必要な工具が揃ったら、いよいよコマ詰めの作業に入ります。
ここでは、一般的な外装変速機付きの自転車を例に、手順をステップごとに解説します。
ステップ1:適切なチェーンの長さを決める
まず、新しいチェーンをどのくらいの長さにカットすればよいかを決めます。
最も確実な方法は、今まで使っていた古いチェーンの長さ(コマ数)に合わせることです。
古いチェーンと新しいチェーンを並べて置き、同じ長さになる位置を確認します。
もし古いチェーンがない場合や、スプロケットの歯数を変更した場合は、「最大ギア法」と呼ばれる方法で長さを決めます。
- フロントギアを最も大きいギア(アウター)にかけます。
- リアギアを最も大きいギア(ロー)にかけます。
- この状態で、チェーンをリアディレイラー(後ろの変速機)に通さずに、直接フロントの最大ギアとリアの最大ギアに巻きつけます。
- チェーンがピンと張った状態から、2リンク(コマ2つ分)長くした長さが、一般的に適切な長さとされています。
ステップ2:チェーンカッターでピンを抜く
カットする位置が決まったら、チェーンカッターを使ってピンを抜きます。
- チェーンカッターの受け台に、カットしたいコマをしっかりとセットします。
- チェーンカッターのハンドルを時計回りにゆっくりと回していくと、先端の矢がピンを押し出していきます。
- ここで重要なポイントは、「ピンを完全に抜ききらない」ことです。ピンの片側がアウタープレート(外側の板)に少し残るように止めます。
こうすることで、後でチェーンをつなぐ際に、このピンを再利用して圧入することができます(メーカーによっては非推奨の場合もあるため後述の注意点を参照)。
完全に抜いてしまうと、再度入れるのは非常に困難です。
- ハンドルを反時計回りに回して矢を戻し、チェーンをカッターから外します。
ステップ3:不要なコマを取り外す
ピンが半分抜けた状態になったら、チェーンを軽くひねるようにすると、不要な部分を分離させることができます。
ステップ4:チェーンをつなぐ
自転車にチェーンを取り付け、先ほど半分抜いたピンを使って再びつなぎ合わせます。
- チェーンの端と端を近づけ、ピンが残っている方のプレートを、もう一方の端のローラー部分にはめ込みます。
- チェーンカッターの受け台の、今度はピンを圧入する側(通常は矢の反対側)にチェーンをセットします。
- 再びハンドルを時計回りに回し、ピンをゆっくりと押し込んでいきます。
- ピンの頭の出っ張り具合が、隣のコマのピンと同じくらいになるまで圧入します。両側から見て、プレートから均等に出ている状態が理想です。
ステップ5:つないだ部分の動きを確認する
ピンを圧入した直後は、そのコマの動きが非常に硬くなっていることがほとんどです。
つないだ部分を両手で持ち、上下左右に優しく揉むように動かして、他のコマと同じようにスムーズに曲がるように馴染ませます。
この作業を怠ると、走行中にその部分で異音や歯飛びが発生する原因になります。
コマ詰めの注意点|つなぎ方とピンの向きを間違えないで
コマ詰め作業を成功させるためには、いくつか重要な注意点があります。
これらを守らないと、走行中のチェーン切れなど、深刻なトラブルにつながる可能性があります。
まず、チェーンのつなぎ方です。
先ほどは古いピンを再利用する方法を紹介しましたが、多くのチェーンメーカー、特にシマノ社などは、一度抜いたピンの再利用を推奨していません。
これは、一度圧入されたピンは強度が低下している可能性があるためです。
安全を最優先するならば、「コネクティングピン」や「ミッシングリンク(クイックリンク)」と呼ばれる、専用の連結用パーツを使用することを強くお勧めします。
- コネクティングピン:チェーンを新規購入した際に付属していることが多い、一度きりの使い切りタイプの連結ピンです。先端が細くなっており、挿入しやすくなっています。
圧入後、不要なガイド部分はペンチなどで折り取ります。
- ミッシングリンク:工具を使わずに手で着脱できる、非常に便利な連結リンクです。チェーンの洗浄などが格段に楽になります。
これもチェーンの段数に合ったものを選ぶ必要があります。
次に、チェーンの裏表とピンの挿入方向です。
一部の高機能チェーン(特にシマノの10速以上の非対称デザインチェーンなど)には、取り付け方向が決まっているものがあります。
チェーンのプレートに刻印されているロゴなどが、外側を向くように取り付ける必要があります。
また、コネクティングピンを挿入する方向も、チェーンの進行方向に対して指定されている場合があります。
これらは製品のマニュアルに必ず記載されているので、作業前によく確認してください。
間違った向きで取り付けると、変速性能が著しく低下したり、チェーンが破損したりする原因となります。
最後に、コマの詰めすぎにはくれぐれも注意してください。
チェーンが短すぎると、リアディレイラーが常に引っ張られた状態になり、プーリーやスプロケットに過度な負荷がかかります。
最悪の場合、ローギア(一番大きなギア)に変速した際にディレイラーを巻き込んで破損させてしまうこともあります。
長さを決めるときは、慎重に、そして確実に行いましょう。
迷った場合は、少し長めにしておき、後から再度調整する方が安全です。
自転車のチェーンのたるみを直す調整方法

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チェーンが伸びてきたけれど、まだ交換するほどではない。
そんな時には、チェーンの「張り」を調整することで、たるみを解消し、快適な走りを取り戻すことができます。
この作業は、特に変速機がついていないシングルスピードの自転車(ママチャリやピストバイクなど)で効果的です。
ここでは、チェーンの適切な張り具合のチェック方法から、具体的な調整手順までを詳しく解説します。
チェーンの張り具合をチェックする方法
調整を始める前に、まずは現状のチェーンがどのくらいたるんでいるのか、そしてどのくらいの張りが理想的なのかを知る必要があります。
チェックは非常に簡単です。
チェーンの上側と下側、その中間あたりを指でつまみ、上下に動かしてみてください。
このときの振れ幅を「遊び」と呼びます。
理想的な遊びの量は、およそ1cmから2cm程度です。
全く遊びがなく、チェーンがパンパンに張っている状態は良くありません。
一見すると力がしっかり伝わりそうですが、実際にはペダルが重くなり、チェーンやギア、ハブ軸のベアリングなどに常に大きな負荷がかかり、部品の摩耗を早めてしまいます。
逆に、遊びが2cm以上あるような、だらんと垂れ下がった状態はたるみすぎです。
この状態では、ペダルを漕いだ時の反応が遅れるだけでなく、段差の衝撃などでチェーンが外れやすくなり、非常に危険です。
指で押してみて、少しだけ上下に動く、この「適度な遊び」がある状態を目指して調整を行っていきます。
後輪を固定しているナットを緩めて調整する手順
チェーンの張り調整は、後輪の車軸(ハブ軸)の位置を前後にずらすことで行います。
後輪を少し後ろに引けばチェーンは張り、前に出せば緩む、という仕組みです。
作業自体はシンプルですが、安全に関わる部分ですので、慎重に行いましょう。
必要な工具は、後輪のハブ軸を固定しているナットのサイズに合ったスパナ、またはメガネレンチです。
一般的にママチャリでは15mmのレンチが使われることが多いです。
以下に、調整の手順をステップごとに解説します。
ステップ1:自転車を安定させる
作業をしやすくするため、自転車を逆さまにしてサドルとハンドルで支えるか、メンテナンススタンドなどを使って後輪が浮いた状態にすると安定します。
逆さまにする場合は、ハンドル周りのベルやライトが破損しないように注意してください。
ステップ2:後輪のハブナットを緩める
左右両側にある、後輪をフレームに固定している大きなナット(ハブナット)を、レンチを使って反時計回りに回して緩めます。
このとき、ナットを完全に外してしまう必要はありません。
後輪が手で前後に動かせる程度に、少し緩めるだけで十分です。
ステップ3:チェーンの張りを調整する
ナットが緩んだら、後輪全体を手で持ち、フレームの後方に向かってゆっくりと引っ張ります。
すると、チェーンがピンと張っていくのが分かります。
ここで、先ほど確認した理想の張り具合(遊びが1〜2cm)になるように、後輪の位置を微調整します。
多くのママチャリには、「チェーン引き(チェーンテンショナー)」という小さな金具が後輪の軸についています。
この金具のナットを締めたり緩めたりすることでも、後輪の位置を微調整できます。
左右のチェーン引きを均等に調整するのがポイントです。
ステップ4:車輪が中央にあることを確認する
チェーンの張りが決まったら、車輪がフレームに対してまっすぐ、中央に位置しているかを確認します。
上から見て、タイヤと左右のフレーム(シートステーやチェーンステー)との隙間が均等になっているかを目視でチェックしてください。
車輪が曲がったまま固定してしまうと、走行が不安定になったり、ブレーキが片効きしたりする原因になります。
ステップ5:ハブナットを本締めする
車輪の位置が決まったら、緩めておいた左右のハブナットをレンチでしっかりと締め付けます。
このとき、片方だけを一気に締めるのではなく、左右を交互に少しずつ均等に締め込んでいくのがコツです。
これにより、締め付ける過程で車輪がずれてしまうのを防げます。
最後に、体重をかけるようにして、しっかりと本締めしてください。
ステップ6:最終確認
最後に、後輪を手で回してみて、スムーズに回転するか、ブレーキがタイヤやリムに干渉していないか、そしてチェーンの張りが適切なままであるかを再確認します。
問題がなければ、作業は完了です。
シングルスピードと変速機付き自転車の調整方法の違い
これまで説明してきた後輪の位置をずらして張りを調整する方法は、主にシングルスピードの自転車(変速機なし)に適用されるものです。
ママチャリ、シティサイクル、ピストバイク、BMXなどがこれに該当します。
一方、ロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイクといった外装変速機付きの自転車の場合は、調整方法が根本的に異なります。
これらの自転車には、「リアディレイラー」という装置がついており、その内部にあるスプリングの力で自動的にチェーンに適切なテンション(張り)をかける仕組みになっています。
これを「テンションプーリー」の働きといいます。
そのため、変速機付きの自転車では、基本的にチェーンの「張り調整」という作業は必要ありません。
もしチェーンがだるんだるんにたるんでいる場合は、それは調整の問題ではなく、以下のような原因が考えられます。
- チェーンが寿命を迎え、伸びきっている。
- リアディレイラーのテンションスプリングが劣化・破損している。
- チェーンの長さがそもそも長すぎる(コマ数が合っていない)。
このような症状が出た場合は、たるみを調整するのではなく、原因を特定し、チェーンの交換(コマ詰めを含む)やリアディレイラーの修理・交換といった対応が必要になります。
自分で原因を特定するのが難しい場合は、無理せず専門の自転車店に相談することをお勧めします。
お店に依頼する場合のチェーン調整料金と作業時間

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自分でチェーンを調整するのは時間がない、あるいは自信がないという方も多いでしょう。
そんな時は、プロに任せるのが安心です。
自転車屋さんや身近なホームセンターでも、チェーンの調整や交換を依頼することができます。
ここでは、お店に作業を依頼する場合の料金相場や作業時間の目安について、詳しく見ていきましょう。
自転車屋さんに頼んだ場合の料金相場はいくら?
いわゆる「街の自転車屋さん」や、スポーツバイクを専門に扱うプロショップに依頼する場合の料金相場は、作業内容によって異なります。
- チェーンの調整(張り調整)後輪の位置をずらしてチェーンのたるみを取るだけの簡単な調整作業の場合、料金は比較的安価です。
- 料金相場:500円 〜 1,500円程度
「ワンコイン(500円)調整」を謳っているお店もあれば、自転車の状態や構造によって少し高めに設定しているお店もあります。
他店で購入した自転車の場合、少し割増料金になることもあります。
- チェーンの交換チェーンが寿命を迎え、新しいものに交換する場合、料金は「部品代」と「作業工賃」の合計になります。
- 作業工賃の相場:1,000円 〜 2,500円程度
- 部品代(チェーン本体)の相場:
- ママチャリ用:1,500円 〜 2,500円程度
- スポーツバイク用(変速段数による):2,000円 〜 6,000円程度
例えば、一般的なママチャリのチェーンを交換する場合、合計で「2,500円 〜 5,000円」あたりが目安となります。
ロードバイクなどで高性能なチェーンを選ぶ場合は、合計金額が1万円近くなることもあります。
専門店に依頼する最大のメリットは、その技術力と信頼性です。
自転車整備士の資格を持つスタッフが、車種に合った適切なパーツを選び、確実な作業を行ってくれます。
チェーンの状態だけでなく、関連するギアの摩耗具合などもチェックして、総合的なアドバイスをもらえることも多いでしょう。
ホームセンターでもチェーン調整は可能?料金比較
多くのホームセンターには自転車売り場が併設されており、修理サービスカウンターでチェーンの調整や交換を受け付けています。
ホームセンターに依頼する際の魅力は、その手軽さと料金設定にあります。
- チェーン調整(張り調整)の料金相場:500円 〜 1,000円程度
- チェーン交換の工賃相場:800円 〜 2,000円程度
全体的に、自転車専門店と比較して工賃が若干安価な傾向にあります。
日常的に使うママチャリやシティサイクルの簡単な調整であれば、費用を抑えられる可能性が高いでしょう。
ただし、いくつか注意点もあります。
ホームセンターのスタッフは、必ずしも全員が自転車整備の専門家というわけではありません。
もちろん、十分な知識と技術を持った方もいますが、店舗や担当者によって技術レベルにばらつきがある可能性は否定できません。
また、特殊な構造を持つ自転車や、ハイエンドなスポーツバイクの場合、対応できる工具や交換用のパーツの在庫がなかったり、作業自体を断られたりすることもあります。
一般的なママチャリのメンテナンスと割り切って利用するのが良いかもしれません。
以下に、自転車専門店とホームセンターの料金や特徴を比較した表をまとめます。
項目 | 自転車専門店 | ホームセンター |
調整料金 | 500円〜1,500円 | 500円〜1,000円 |
交換工賃 | 1,000円〜2,500円 | 800円〜2,000円 |
メリット | 専門性が高く安心感がある、車種を問わず対応可能、総合的なアドバイスがもらえる | 手軽に依頼できる、料金が比較的安価な傾向 |
デメリット | 料金がやや高めの場合がある、店舗が近くにない場合がある | スタッフの技術に差がある可能性、特殊な車種は対応不可の場合がある |
どちらが良いということではなく、ご自身の自転車の種類、求めるサービスの質、そして予算に応じて選ぶのが賢明です。
チェーン調整・交換にかかる作業時間の目安
お店に自転車を持ち込んだ際、どのくらいの時間で作業が完了するのかも気になるところです。
- チェーンの調整(張り調整)にかかる時間:約10分 〜 20分これは比較的簡単な作業なので、店舗が混雑していなければ、その場ですぐに対応してもらえることがほとんどです。
- チェーンの交換にかかる時間:約20分 〜 40分古いチェーンを外し、新しいチェーンの長さを調整して取り付けるため、調整よりは時間がかかります。
それでも、基本的には当日中に完了する作業です。
ただし、これらの時間はあくまで作業そのものにかかる時間の目安です。
店舗の混雑状況によっては、自転車を預けて後で受け取りに行く形になることも少なくありません。
特に週末や祝日は修理依頼が集中しやすいため、待ち時間が長くなる傾向があります。
急いでいる場合や、確実にその日のうちに受け取りたい場合は、事前に店舗へ電話で連絡し、混雑状況や作業の予約が可能かどうかを確認しておくことをお勧めします。
その際に、自分の自転車の車種(ママチャリ、クロスバイクなど)を伝えておくと、話がスムーズに進みます。
自転車のチェーンに関するよくある質問

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自転車のチェーンメンテナンスに関して、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式でお答えします。
工具の代用からパーツの選び方、日々のケアまで、知っておくと役立つ情報ばかりです。
チェーンカッターは100均のものでも代用できる?
結論から言うと、100円ショップで販売されているチェーンカッター(もし存在した場合)や、それに似た工具での代用は、絶対にお勧めできません。
その理由は、強度と精度の問題です。
自転車のチェーンピンは、走行中の大きな力に耐えられるよう、非常に硬く圧入されています。
このピンを安全に押し出すためには、相応の強度と精度を持った専用の工具が必要です。
安価で簡易的な工具を使用した場合、以下のようなリスクが考えられます。
- 工具が破損する:ピンを押し出す力に工具が耐えきれず、ハンドルが曲がったり、先端の矢が折れたりする危険性があります。作業中に工具が壊れると、怪我をする恐れもあります。
- ピンをまっすぐ押し出せない:工具の精度が低いと、ピンを斜めに押してしまい、チェーンのプレートを曲げてしまうことがあります。一度変形したプレートは元に戻せず、チェーンそのものが使えなくなってしまいます。
- 力が足りない:そもそも固いピンを押し出すだけの力を伝えられない構造のものが多く、作業が非常に困難になります。
チェーンは安全走行の要となるパーツです。
そのメンテナンスに使う工具は、信頼できる自転車用の製品を選ぶべきです。
価格は1,500円程度から購入できますので、安全のためにも専用のチェーンカッターを用意しましょう。
交換用チェーンの種類と正しい選び方
チェーンを交換しようと思っても、様々な種類があってどれを選べばいいか分からない、という方も多いでしょう。
チェーン選びで最も重要なポイントは「変速段数(スピード)」です。
- 自転車の変速段数に合わせるチェーンは、リアスプロケット(後ろの歯車)の枚数によって厚みが異なります。
例えば、後ろのギアが8枚あれば「8速用」、11枚あれば「11速用」のチェーンを選ぶ必要があります。
間違った段数のチェーンを使うと、変速が全くうまくいかないだけでなく、走行中にチェーンが外れたり、ギアを傷めたりする原因になります。
自分の自転車のリアのギア枚数を数え、それに合ったチェーンを選びましょう。
- メーカーを合わせるのが基本自転車のコンポーネント(部品群)は、主にシマノ、カンパニョーロ、スラムといったメーカーが製造しています。
変速機やギアと同じメーカーのチェーンを選ぶのが、最も互換性が高く安心です。
ただし、KMCやFSAといったチェーン専門メーカーからは、各社のコンポーネントに対応する互換チェーンも販売されています。
- リンク数(長さ)チェーンは通常、114リンクや116リンクといった形で、一般的な自転車には十分な長さで販売されています。
購入後、自分の自転車に合わせてコマ詰め(カット)して長さを調整するのが基本です。
そのため、購入時にリンク数を過度に気にする必要はあまりありません。
- コネクティング方式チェーンの連結方法には、専用のピンでつなぐ「コネクティングピン」方式と、手で着脱可能な「ミッシングリンク(クイックリンク)」方式があります。
ミッシングリンク付きのチェーンは、工具なしでチェーンの着脱ができるため、掃除などのメンテナンスが非常に楽になるというメリットがあります。
選び方に迷ったら、自転車屋さんに相談するのが確実です。
自分の自転車のメーカーやモデル名を伝えれば、最適なチェーンを提案してもらえます。
チェーンオイルはなぜ必要?おすすめの注油頻度
チェーンオイルの注油は、自転車メンテナンスの基本中の基本であり、非常に重要な作業です。
チェーンオイルが必要な理由は、大きく分けて3つあります。
- 潤滑:チェーンを構成する多くの小さな部品(ピン、ローラー、プレート)の間の摩擦を減らし、動きをスムーズにします。これにより、ペダリングが軽くなり、パワーロスを防ぎます。
- 防錆:オイルの油膜がチェーンの金属表面を覆い、雨や湿気による錆の発生を防ぎます。錆はチェーンの劣化を早める最大の敵です。
- 洗浄:注油の際に古いオイルや汚れを浮き上がらせ、拭き取ることでチェーンをクリーンに保つ効果もあります。
チェーンオイルには、主に「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」の2種類があります。
- ウェットタイプ:オイルが粘ちょうで、雨や水に強いのが特徴です。潤滑性能が長持ちしますが、ホコリや砂が付着しやすいというデメリットもあります。
雨天でも乗る方や、長距離を走る方にお勧めです。
- ドライタイプ:オイルがサラサラしていて、塗布後に溶剤が蒸発し、乾いた膜を形成します。汚れが付きにくくチェーンを綺麗に保てますが、雨に弱く、効果が長持ちしないため、こまめな注油が必要です。
晴天時の走行がメインの方や、綺麗な状態を保ちたい方にお勧めです。
おすすめの注油頻度は、乗り方や環境によって変わりますが、以下のタイミングを目安にすると良いでしょう。
- 走行距離:200km〜300kmごと
- 期間:1〜2週間に一度(よく乗る場合)
- その他:「チェーンの音がうるさくなってきた」「雨の中を走った後」「変速がスムーズでなくなった」と感じた時
注油の前には、必ず古い汚れたオイルをウエスで拭き取ることが大切です。
汚れた上から注油しても、汚れを内部に閉じ込めてしまい、逆効果になることがあります。
ディグリーザー(洗浄剤)を使って完全に洗浄してから注油するのが理想的です。
まとめ:自転車のチェーン調整で快適な走りを維持しよう

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自転車のチェーンは、私たちの力を走る力に変えてくれる、縁の下の力持ちです。
その重要性にもかかわらず、メンテナンスは見過ごされがちですが、チェーンのたるみや伸びは、走行性能の低下や不快な異音だけでなく、チェーンの脱落といった深刻な事故のリスクもはらんでいます。
この記事では、チェーン調整の必要性から、自分でできる「コマ詰め」や「張り調整」の具体的な方法、そしてプロに依頼する場合の料金相場まで、幅広く解説してきました。
チェーンの伸びの原因や交換のサインを理解し、適切なタイミングでメンテナンスを行うことが、安全で快適な自転車ライフの鍵となります。
自分でチェーンカッターを握り、愛車のコンディションを整える達成感を味わうのも素晴らしい経験です。
一方で、自信がない時や時間がない時には、無理せず自転車屋さんやホームセンターのプロの力を借りるのが賢明な選択です。
料金や作業時間も、思ったより手軽であることがお分かりいただけたかと思います。
重要なのは、チェーンの状態に常に気を配り、「おかしいな」と感じたらすぐに行動することです。
定期的な洗浄と注油といった日々の小さなケアが、チェーンの寿命を延ばし、大きなトラブルを未然に防ぎます。
この記事で得た知識を活かして、あなたの自転車のチェーンを最適な状態に保ち、ペダルを漕ぐたびに感じられる軽快でスムーズな走りを、いつまでも維持していきましょう。
安全で快適なメンテナンスは、あなたの自転車ライフをより一層豊かなものにしてくれるはずです。