気持ちよく自転車を漕いでいたら、突然「ガチャン!」という音と共にペダルが軽くなり、進まなくなった。
そんな経験はありませんか。
ペダルをこいでも空回りするだけで、前に進まない。
多くの場合、その原因は「チェーンの外れ」です。
特に、通勤や通学、サイクリングの途中でこのトラブルに見舞われると、どうしていいか分からず焦ってしまいますよね。
しかし、安心してください。
自転車のチェーンが外れるトラブルは、実は比較的よくあることで、その多くは特別な工具を使わずに自分で直すことが可能です。
この記事では、自転車のチェーンが外れた時に自分でできる直し方を、初心者の方にも分かりやすく、写真を見ているかのように具体的に解説していきます。
変速ギアがないシンプルな自転車から、多段変速のスポーツバイクまで、種類別の直し方を丁寧に説明します。
また、手が汚れないための準備や、やってはいけないNG行動、さらにはチェーンが外れる根本的な原因と、それを未然に防ぐためのメンテナンス方法まで、網羅的にご紹介します。
この記事を読み終える頃には、「チェーンが外れても、もう慌てない」と自信が持てるようになっているはずです。
万が一のトラブルに備え、安全で快適な自転車ライフを送るための知識を身につけていきましょう。
自転車のチェーンが外れた!まず確認すべきこと

自転車ライフナビ・イメージ
チェーンが外れたことに気づいたら、まずは慌てずに自転車を安全な場所に停めましょう。
車や歩行者の通行の妨げにならない、平坦で作業しやすい場所を選ぶことが大切です。
そして、闇雲に触り始める前に、いくつかの点を確認し、準備を整えることが、スムーズな修理と安全確保の鍵となります。
手が汚れないための準備
自転車のチェーンは、潤滑のための油と、走行中に付着した砂やホコリで真っ黒に汚れています。
素手で触ると、油汚れが爪の間まで入り込み、石鹸で洗っただけではなかなか落ちません。
また、汚れた手で服や自転車の他の部分を触ってしまい、被害が拡大することもあります。
そうした事態を避けるため、作業前には手を保護する準備をしましょう。
理想的なのは、カバンに軍手や薄手の作業用手袋を一枚入れておくことです。
もし手袋がない場合は、コンビニのレジ袋やスーパーのポリ袋を手にはめて輪ゴムで手首を留めれば、簡易的な手袋として十分に役立ちます。
それすらもない緊急時には、ティッシュペーパーやハンカチを何枚か重ねてチェーンをつかむようにしましょう。
服装にも注意が必要です。
特に、白っぽい服やデリケートな素材の服を着ている場合は、作業中にチェーンが触れてしまわないよう、袖をまくったり、裾が地面につかないように気をつけたりする配慮が求められます。
チェーンが外れた原因は?
チェーンの直し方を覚えることも重要ですが、なぜ外れてしまったのか、その原因を知ることも大切です。
原因がわかれば、再発防止に繋がります。
自転車のチェーンが外れる主な原因は、いくつか考えられます。
- 変速操作のミス
最も多い原因の一つです。
特に、ペダルを漕ぐのを止めた状態で変速レバーを操作すると、チェーンが正しくギアに移動できず、外れやすくなります。
また、ペダルに強い力を込めて坂道を登っている最中の変速も、チェーンや変速機に大きな負担をかけ、脱線の原因となります。
- チェーンの伸び・たるみ
チェーンは金属でできていますが、長期間使用していると、ピンやプレートが摩耗して全体が少しずつ伸びてきます。
チェーンが伸びると、ギアの歯との噛み合いが甘くなり、少しの衝撃でも外れやすくなります。
特に変速機のない自転車では、チェーンの張りが緩んでいる(たるんでいる)と、簡単に外れてしまいます。
- チェーンやギアの汚れ・摩耗
チェーンや前後のギア(スプロケット、チェーンリング)に、古い油や泥、砂などが固着していると、チェーンの動きがスムーズでなくなり、外れる原因になります。
また、長年の使用でギアの歯がすり減って鋭くなっていると、チェーンをしっかりと保持できなくなり、脱線しやすくなります。
- 変速機(ディレイラー)の不調
変速機付きの自転車の場合、変速機自体に問題があることも考えられます。
転倒などで変速機をぶつけて歪んでしまったり、調整がずれていたりすると、チェーンを正しい位置に誘導できず、頻繁に外れるようになります。
- 外部からの衝撃
歩道の段差を勢いよく乗り越えたり、ガタガタの悪路を走行したりした際の衝撃で、チェーンが暴れてギアから外れてしまうこともあります。
自分の自転車がどの状況に近いか、少し観察してみましょう。
チェーンが油でギトギトになっていたり、だらんとたるんでいたりしないか、確認するだけでもヒントが得られます。
やってはいけないNGな行動
焦っていると、つい力任せに解決しようとしてしまいがちですが、それは状況を悪化させるだけです。
チェーンが外れた際に、絶対にやってはいけない行動を覚えておきましょう。
- 力任せにチェーンを引っ張る
外れたチェーンを無理やり引っ張って、元の位置に戻そうとするのは最も危険な行為です。
チェーンが自転車のフレームとギアの間に固く噛み込んでしまい、より取り外しにくい状況になる可能性があります。
最悪の場合、チェーンやギア、変速機を破損させてしまい、修理費用が高くつくことにもなりかねません。
- ペダルをむやみに逆回転させる
チェーンが外れた状態でペダルを逆回転させると、チェーンがさらにおかしな場所に絡みついたり、変速機(リアディレイラー)に巻き込まれたりすることがあります。
特に変速機付きの自転車では、ディレイラーアームを破損させる原因となるため、絶対にやめましょう。
- チェーンが外れたまま走行を続ける
「少しぐらいなら」と考えて、チェーンが外れた状態で自転車を漕ぎ続けたり、惰性で走り続けたりするのも危険です。
外れたチェーンが車輪に絡まると、急ブレーキがかかった状態になり、転倒して大きな怪我につながる恐れがあります。
また、フレームやホイールに傷をつけてしまう原因にもなります。
これらの行動は、自転車を傷つけ、自分自身を危険に晒す行為です。
トラブルが起きた時こそ、冷静に対処することが何よりも重要です。
自転車チェーンの基本的な治し方

自転車ライフナビ・イメージ
さて、準備と確認が済んだら、いよいよチェーンを直す作業に入ります。
自転車には、変速ギアが付いていないシンプルなタイプと、複数のギアを切り替えて使う変速機付きのタイプがあります。
それぞれ構造が少し異なるため、直し方も変わってきます。
お使いの自転車の種類に合わせて、正しい方法で作業を進めましょう。
【変速なし自転車】チェーンの戻し方
いわゆる「ママチャリ」や「シティサイクル」に多い、変速ギアがないタイプの自転車は、構造がシンプルなため、比較的簡単にチェーンを戻すことができます。
- 自転車を逆さまにする
可能であれば、自転車をひっくり返して、サドルとハンドルで車体を支える状態にすると、作業が格段にしやすくなります。
地面に直接置くとサドルやグリップが傷つく可能性があるので、気になる方は下に段ボールや布を敷くと良いでしょう。
逆さまにできない場合は、スタンドを立てた状態で、後輪を少し持ち上げながら作業します。
- 後ろのギアにチェーンをかける
まず、外れたチェーンを手に取り、後輪の軸にある歯車(スプロケット)に半分ほどかけます。
この時、チェーンの進行方向(上側が前に、下側が後ろに動く)を意識してください。
チェーン全体がたるんでいる状態なので、簡単にかけることができるはずです。
- 前のギアにチェーンをかける
次に、ペダルがついている方の大きな歯車(チェーンリング)にチェーンをかけていきます。
ここがポイントですが、全ての歯にかけようとする必要はありません。
チェーンリングの下半分、あるいは手前の数個の歯に、チェーンの内側のプレートが引っかかるように乗せるだけで十分です。
- ペダルをゆっくりと前に回す
チェーンが前後のギアに軽くかかった状態になったら、手でペダルをゆっくりと進行方向(自転車が前に進む方向)に回します。
すると、「てこの原理」でチェーンがギアの歯に沿って自動的に引き上げられ、「カチャン、カチャン」という音と共に、元の位置にはまっていきます。
この時、勢いよく回すとチェーンが再び外れる可能性があるので、ゆっくりと、チェーンの動きを確認しながら回すのがコツです。
- 確認作業
チェーンが完全にはまったら、ペダルを数回、手で回してみて、チェーンがスムーズに動くか、異音や引っ掛かりがないかを確認します。
問題がなければ、自転車を元の状態に戻して作業完了です。
最後に、汚れた手を拭くのを忘れないようにしましょう。
【変速あり自転車】チェーンの戻し方
マウンテンバイクやクロスバイク、ロードバイクなど、外装変速機(ディレイラー)が付いている自転車の直し方は、少しだけ手順が増えます。
変速機は、チェーンをS字にガイドしているため、この構造を理解することがポイントです。
- ギアの位置を確認する
まず、チェーンがどのギアから外れているかを確認します。
前のギア(フロントディレイラー側)で外れているか、後ろのギア(リアディレイラー側)で外れているか、あるいは両方かを見極めます。
また、現在の変速レバーの位置も確認しておくと、戻すギアの目安になります。
- リアディレイラーを操作してチェーンをたるませる
変速あり自転車のチェーンを直す上で、最も重要なのがこの工程です。
後輪の横にある変速機(リアディレイラー)には、二つの小さな歯車(プーリー)が付いたアーム部分(プーリーケージ)があります。
このアームを手で掴み、自転車の前方に向かってゆっくりと押し出してみてください。
すると、バネの力に逆らってアームが動き、S字にかかっているチェーン全体がだるんとたるみます。
この「チェーンをたるませる」という動作が、チェーンをギアに戻すためのスペースを生み出します。
- チェーンを正しいギアに戻す
チェーンがたるんだ状態を維持したまま、もう片方の手でチェーンをつかみ、外れているギアの歯の上に乗せます。
例えば、チェーンが一番小さいギア(トップギア)から外れているなら、そのギアに戻します。
前のギアで外れている場合も同様に、チェーンを正しいチェーンリングの上に乗せます。
チェーンがフレームとギアの間に挟まっている場合は、このたるませた状態を維持しながら、慎重に引き出してください。
- リアディレイラーをゆっくり戻し、ペダルを回す
チェーンをギアに乗せたら、リアディレイラーのアームを押し出していた手をゆっくりと離します。
すると、バネの力でアームが元の位置に戻り、チェーンに適切な張りがかかります。
その後、変速なし自転車の時と同様に、ペダルを手でゆっくりと進行方向に回します。
チェーンがギアに沿って動き、完全にはまるのを確認します。
- 動作確認
チェーンがはまったら、後輪を浮かせた状態でペダルを回し、スムーズに動くかを確認します。
さらに、変速レバーを操作して、全てのギアにスムーズに変速できるかもチェックしましょう。
もし特定のギアで異音がしたり、動きが渋かったりする場合は、ディレイラーの調整がずれている可能性も考えられます。
どうしても直らない・固い時の対処法
上記の方法を試しても、チェーンが全く動かない場合があります。
これは、チェーンがフレームとギア(特に前のチェーンリング)の間に、きつく噛み込んでしまっているケースが多いです。
このような場合、最終手段として「てこ」の原理を利用する方法があります。
ただし、自転車を傷つけるリスクも伴うため、慎重に行ってください。
用意するものは、マイナスドライバーやタイヤレバーなど、先端が平らで丈夫な棒状のものです。
まず、傷防止のために、てことして使う道具の先端や、フレームに当たる部分に布(ウエスやハンカチ)を巻きつけます。
そして、噛み込んでいるチェーンとフレームの隙間に、てこの先端を慎重に差し込みます。
支点となる部分にも布を当て、ゆっくりと力を加えて、チェーンをギア側へ押し出すようにこじります。
この時、一気に力を加えるとフレームが凹んだり、塗装が剥げたりする危険があります。
少しずつ、様子を見ながら力を加えるのがポイントです。
数回試しても外れない場合や、作業に不安を感じる場合は、無理をせず、自転車屋さんに持ち込むのが賢明な判断です。
無理な作業で部品を壊してしまうと、かえって修理費用が高くついてしまいます。
こんな時は自転車屋さんへ!修理のサイン

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自分でチェーンを直すことができても、その後すぐにまた外れてしまう。
あるいは、そもそもチェーンが破損していて、直しようがない。
そんな時は、根本的な原因を解決する必要があります。
以下のような症状が見られる場合は、迷わず専門家である自転車屋さんに相談しましょう。
チェーンが伸びてる・たるんでいる
先述の通り、チェーンは消耗品であり、使っているうちに必ず伸びてきます。
チェーンが伸びると、ギアとの噛み合いが悪くなり、チェーン外れの直接的な原因となります。
チェーンの伸びは、専用の「チェーンチェッカー」という工具を使えば正確に測定できますが、簡易的なチェック方法もあります。
自転車の前側のギア(チェーンリング)の一番出っ張っている部分で、チェーンを指でつまんで前方に引っ張ってみてください。
新品に近いチェーンはほとんど動きませんが、伸びたチェーンはギアの歯から大きく浮き上がり、向こう側が見えるほどの隙間ができます。
もし、歯の山が半分以上見えるようなら、交換時期が近いサインです。
また、変速機のない自転車で、チェーンがだらんとたるんでいる場合、後輪の軸の位置を調整する「チェーン引き」という作業で張りを調整できますが、これも適切な張り具合にするには経験が必要です。
たるみがひどい場合は、チェーンが伸びきっている可能性も高いため、一度プロに見てもらうことをお勧めします。
チェーンが切れた・破損している
走行中に「バチン!」という大きな音がして、チェーンが完全に切れてしまうこともあります。
これは、チェーンの経年劣化やサビ、過度な負荷が原因で、チェーンを繋いでいるピンが抜けたり、プレートが破断したりすることで起こります。
切れたチェーンは、専用の工具(チェーンカッター)と部品(コネクティングピンやミッシングリンク)があれば、再接続することも不可能ではありません。
しかし、一度切れたチェーンは他の部分も弱っている可能性が高く、再度切れるリスクを伴います。
安全のためにも、チェーンが切れた場合は、部分的な修理ではなく、新品への交換が基本となります。
また、転倒などによって、チェーンのプレートが「く」の字に曲がってしまったり、ねじれてしまったりすることもあります。
このような変形したチェーンは、正常にギアと噛み合わず、異音や変速不良、チェーン外れの大きな原因になります。
見た目で明らかに破損している場合は、自分で何とかしようとせず、速やかに交換を依頼しましょう。
修理にかかる値段・料金の目安
自転車屋さんに修理を依頼する際に、気になるのがその費用です。
料金は、お店や地域、自転車の種類、作業の難易度によって変動しますが、一般的な目安は以下の通りです。
修理内容 | 料金の目安(部品代・工賃込み) | 作業内容 |
チェーン外れ修理 | 500円 ~ 1,500円 | 外れたチェーンを元に戻すだけの簡単な作業。 |
チェーン調整 | 1,000円 ~ 2,000円 | チェーンの張りを調整する作業(チェーン引き)。 |
チェーン交換(変速なし) | 2,500円 ~ 4,000円 | 新しいチェーンへの交換。チェーンカバーの有無で変動。 |
チェーン交換(外装変速あり) | 3,000円 ~ 6,000円 | 新しいチェーンへの交換。ギアの段数やチェーンのグレードで変動。 |
ディレイラー調整 | 1,000円 ~ 3,000円 | 変速機の位置やワイヤーの張りを調整する作業。 |
上記の表はあくまで一般的な目安です。
チェーン交換と同時に、摩耗したギア(スプロケット)の交換も勧められる場合があります。
その場合は、部品代が追加でかかります。
正確な料金については、修理を依頼する前に、お店に見積もりを出してもらうと安心です。
多くの自転車屋さんでは、快く対応してくれます。
自転車のチェーンが外れるのを防ぐには?

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トラブルが起きてから対処するのも大切ですが、それ以上に重要なのは、トラブルを未然に防ぐことです。
日頃のちょっとした心がけとメンテナンスで、チェーンが外れるリスクは大幅に減らすことができます。
快適な自転車ライフを長く続けるために、以下の予防策をぜひ実践してみてください。
定期的なチェーンの掃除と注油
チェーンのコンディションを良好に保つための基本中の基本が、「洗浄」と「注油」です。
これを怠ると、チェーンの寿命は著しく短くなります。
まず、チェーンの掃除ですが、理想は1ヶ月に1回、あるいは雨天走行後など、汚れが気になったタイミングで行うのがベストです。
用意するものは、汚れてもいい布(ウエス)数枚と、チェーン用のクリーナー、そしてチェーン用のオイル(ルブ)です。
掃除の手順は以下の通りです。
- 乾いた布で大まかな汚れを拭き取る
まず、ウエスでチェーンを掴むようにして、ペダルを逆回転させ、チェーン表面の砂やホコリ、古い油の塊を大まかに拭き取ります。
- クリーナーで本格的に洗浄する
次に、チェーンクリーナーを吹き付け、ブラシなどを使ってリンク(コマ)の隙間の汚れをかき出します。
専用のチェーン洗浄機を使うと、手を汚さず効率的に洗浄できます。
クリーナーがない場合は、パーツクリーナーでも代用できますが、ゴムや樹脂部品にかからないように注意が必要です。
- クリーナーを拭き取り、乾燥させる
汚れが浮き上がってきたら、再度きれいなウエスでクリーナー成分と汚れを丁寧に拭き取ります。
その後、少し時間を置いて、チェーンを完全に乾燥させます。
洗浄が終わったら、次は注油です。
注油は、チェーンの各リンクの隙間にオイルを浸透させ、金属同士の摩擦を減らし、動きを滑らかにするために行います。
注油のポイントは以下の通りです。
- チェーン用のオイル(ルブ)を使う
CRC-556のような浸透潤滑剤は、一時的には滑らかになりますが、油膜がすぐに飛んでしまい、元々塗布されていた潤滑油まで洗い流してしまうため、チェーン用としては不向きです。
必ず、自転車のチェーン専用のオイルを使用しましょう。
オイルには、雨に強い「ウェットタイプ」と、汚れが付着しにくい「ドライタイプ」があります。
天候や走行環境に合わせて選ぶのがおすすめです。
- 一コマずつ、少量ずつ注油する
オイルをスプレーで全体に吹きかけるのではなく、チェーンのコマとコマのつなぎ目(ローラー部分)に、一滴ずつ垂らしていくのが最も効果的です。
手間はかかりますが、オイルの無駄がなく、必要な場所に確実に潤滑剤を届けることができます。
- 余分なオイルは拭き取る
注油後、ペダルを回してオイルを全体に行き渡らせたら、必ず表面に残った余分なオイルをウエスで拭き取ってください。
表面にオイルが残っていると、それが接着剤の役割を果たし、砂やホコリを呼び寄せてしまい、かえってチェーンを汚す原因になります。
この一連の作業を定期的に行うだけで、チェーンの寿命が延び、変速性能も向上し、チェーン外れのリスクを劇的に減らすことができます。
正しいギアチェンジの方法
変速機付きの自転車に乗っている方は、ギアチェンジの方法を見直すことも、チェーン外れの予防に繋がります。
特に、以下の「やってはいけない変速操作」を無意識にしていないか、確認してみましょう。
- 停車中の変速
外装変速機は、チェーンが動いている状態でないとギアが切り替わりません。
止まったままで変速レバーだけを操作し、その後に漕ぎ始めると、チェーンに一気に無理な力がかかり、外れる原因のトップになります。
変速は必ず、ペダルを軽く回しながら行いましょう。
- ペダルに強い力をかけている時の変速
急な坂道を「うぉー!」と力いっぱい踏み込んでいる最中にギアチェンジをするのもNGです。
張力が最大になっているチェーンを無理やり動かそうとするため、チェーンやギア、変速機に大きなダメージを与え、脱線や破損につながります。
坂道の手前で、あらかじめ軽いギアに変速しておくのがスマートな乗り方です。
- たすき掛け
「たすき掛け」とは、チェーンが極端に斜めになるギアの組み合わせを指します。
具体的には、「前のギアが一番外側(アウター)で、後ろのギアが一番内側(ロー)」という組み合わせや、その逆の「前のギアが一番内側(インナー)で、後ろのギアが一番外側(トップ)」という組み合わせです。
この状態は、チェーンに常にねじれのストレスがかかり、異音や摩耗を促進するだけでなく、チェーンが外れやすくなります。
チェーンラインがなるべく直線に近くなるようなギアの組み合わせを意識しましょう。
正しいギアチェンジは、チェーンへの負担を減らし、部品を長持ちさせ、結果的にトラブルを防ぐことに繋がります。
チェーンの交換時期の目安
どんなに丁寧にメンテナンスをしていても、チェーンはいつか寿命を迎えます。
交換時期を見極めることも、大きなトラブルを未然に防ぐ上で重要です。
交換時期の目安としては、一般的に以下のように言われています。
- 走行距離:約3,000km ~ 5,000km
- 使用期間:約1年 ~ 2年(使用頻度による)
ただし、これはあくまで目安です。
雨天走行が多い方や、体重のある方、坂道を多用する方などは、チェーンの摩耗が早まる傾向にあります。
最も確実なのは、やはり「チェーンの伸び」を確認することです。
前述した簡易チェック方法を定期的に行ったり、自転車屋さんに点検を依頼したりして、チェーンの状態を把握しておくことが大切です。
伸びたチェーンを使い続けると、チェーンが外れやすくなるだけでなく、ギア(スプロケットやチェーンリング)の歯も異常摩耗させてしまいます。
そうなると、チェーン交換だけでなく、高価なギアも一緒に交換する必要が出てきてしまい、結果的に修理費用が高くついてしまいます。
早め早めのチェーン交換は、お財布にとっても優しい選択なのです。
チェーン以外のよくあるトラブルと対処法

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自転車のトラブルは、チェーン外れだけではありません。
ここでは、チェーンに関連する、その他のよくあるトラブルとその原因、対処法について解説します。
これらの知識も持っておくことで、いざという時に冷静に対応できるようになります。
ペダルが動かない・空回りする
ペダルを漕いでも、手応えがなく空回りしてしまう。
この症状の原因として、まず考えられるのは「チェーン外れ」や「チェーン切れ」です。
まずは、これまで説明してきた方法でチェーンの状態を確認してください。
もし、チェーンは正常にかかっているのにペダルが空回りする場合、後輪のハブ(車軸)内部にある「フリーハブ(またはフリーホイール)」という部品の故障が考えられます。
フリーハブは、ペダルを前に漕いだ時だけ動力を伝え、後ろに回したり漕ぐのをやめたりした時には空転させるための重要な機構です。
この内部の爪が摩耗したり、グリスが固着したりすると、動力をうまく伝えられず空回りしてしまいます。
この部分の修理は、専門的な工具と知識が必要不可欠ですので、すぐに自転車屋さんに持ち込んでください。
逆に、ペダルが固くて全く動かない、という場合は、チェーンがフレームとギアの間に固く噛み込んでいる可能性が高いです。
この場合は、前述の「どうしても直らない・固い時の対処法」を試すか、無理せず修理を依頼しましょう。
ギアチェンジができない
変速レバーを操作しても、ギアが変わらない、あるいは意図しないギアに勝手に変わってしまう。
これもよくあるトラブルの一つです。
原因はいくつか考えられます。
- 変速ワイヤーの問題
変速機は、ハンドル部分のレバーとワイヤーで繋がっています。
このワイヤーが伸びてしまったり(特に新品の自転車で起こる「初期伸び」)、サビや汚れで動きが渋くなったり、あるいは切れてしまったりすると、変速操作が正しく伝わらなくなります。
ワイヤーの張りを調整することで直る場合もありますが、サビや劣化が見られる場合はワイヤー自体の交換が必要です。
- ディレイラー(変速機)の調整ズレ・故障
転倒などでぶつけて変速機が歪んでしまったり、長年の使用で可動部のボルトが緩んだりして、調整がずれてしまうことがあります。
ディレイラーには、動く範囲を決めるための調整ネジなどがありますが、これを初心者が触ると、かえって状況を悪化させてしまうことも少なくありません。
変速の調子が悪いと感じたら、一度プロに点検・調整してもらうのが最も確実な解決策です。
チェーンから異音がする
自転車を漕いでいると、どこからか不快な音が聞こえてくることがあります。
その音の種類によって、原因をある程度推測することができます。
- 「シャリシャリ」「キュルキュル」という軽い音
これは、チェーンの油が切れているサインであることが多いです。
チェーンのリンク部分の潤滑が不足し、金属同士がこすれて鳴っています。
まずは、チェーンの洗浄と注油を試してみてください。
これだけで、驚くほど静かになることがよくあります。
- 「ガリガリ」「ガチャガチャ」という硬い音
この音は、より深刻な問題を示唆している可能性があります。
考えられる原因としては、チェーンやギアの歯が極端に摩耗している、ディレイラーの調整がずれていてチェーンが変速機本体や隣のギアに接触している、チェーンが伸びていてギアに正しく噛み合っていない、などが挙げられます。
洗浄・注油をしても音が消えない場合や、変速時に特に音がひどくなる場合は、部品の摩耗や調整不良が考えられるため、自転車屋さんでの点検をお勧めします。
異音は、自転車が発している「不調のサイン」です。
放置しておくと、大きなトラブルにつながる可能性もあるため、早めに対処するように心がけましょう。
まとめ:チェーンが外れても慌てず対処しよう

自転車ライフナビ・イメージ
自転車のチェーン外れは、誰にでも起こりうる身近なトラブルです。
しかし、その原因や正しい直し方を知っていれば、決して怖いものではありません。
この記事でご紹介した手順を思い出せば、多くの場合はあなた自身の手で、数分で解決できるはずです。
まずは安全な場所に停車し、手を汚さない準備をして、落ち着いてチェーンの状態を確認すること。
そして、変速がない自転車ならペダルを回すだけ、変速がある自転車ならディレイラーを少し操作して、優しくチェーンを元に戻してあげる。
この流れを覚えておくだけで、次からはもう焦ることはないでしょう。
同時に、日頃からのメンテナンスがいかに重要かもご理解いただけたかと思います。
定期的なチェーンの洗浄と注油、そして正しいギアチェンジを心がけるだけで、チェーンが外れるリスクを大幅に減らし、自転車の寿命を延ばすことができます。
それは、安全で快適なサイクリングを楽しむための、自分自身への投資とも言えるでしょう。
もちろん、チェーンが切れたり、何度直しても外れたり、自分では手に負えないと感じたりした時は、決して無理をしないでください。
そんな時は、頼りになる街の自転車屋さんが、あなたの力になってくれます。
正しい知識を身につけ、時にはプロの力も借りながら、これからも素晴らしい自転車ライフを送ってください。